331 手、舐められた!
「ガリさんのこと、どうする?」
ジンとアイボリーが話している。
「職員がサークルに入ったらダメって決まり、あるのかな」
「さあ」
「入ってくれたらうれしいね」
「彼女、ストイックだから、的中の嵐だったりして」
「じゃ、ミリッサ先生、形なしだ」
ハルニナは、今度こそ卒業をものにすることができるだろう。
大学をやめると言い出したが、引き止めが奏功し、猛勉強を始めたのだ。
今更ながらだが、卒業論文にも精を出している。
もともと、頭はいい。
無事卒業できるだろう。
PHカニとの抗争次第ではあろうが、こちらはメイメイがきちんと補佐している。
「来季のサークルのルール、見直さない?」
「追加でしょ」
「パドックは見る」
「先輩後輩の区別なし」
「レースとパドック以外ではお互い束縛しない。自由行動」
「各自勝負レースを決め、買い目公表」
「ミリッサが言うように、各人、常に品格ある行動を」
「これまで通りね。それ以外に?」
「こんなのはどう? ペットロボット禁止」
「えっ、ジン。三四郎、連れてこないの?」
「うん」
「ふーん。でも、競馬と関係ない禁止事項はねえ」
「じゃ、G1レース日は複勝転がしをやる」
「それはいいかも。楽しいし。でも、それってルール?」
「部活、たまにはテニスコートの庭園でやる。藤棚のベンチで」
「さあ、先生がいいって言ったらね」
「それから、それから、えっと、もう思いつかないね」
「結局、ほとんど今まで通り、よね」
年末の有馬記念現地参戦は、中止になった。
四年生のハルニナとスペーシア。
私のために気を使わないで、とスペーシアが固辞したのだ。
ハルニナはもともと多忙。行けはしない。
ジンとアイボリーが話し合い、次年度に繰り越したのだった。
ジンのトカゲに、妖怪はもういない。
しかし、ジンのペット熱も冷めたようだ。
アイボリーは卒論のテーマを変更した。
公営競馬の地域経済に与える影響(京都編)、という無難なテーマに。
メイメイは大学職員の道を目指すという。
ポーハーハー・ワイの仕事は続けるつもりのようだ。
ただ、サークルの部長就任には全く興味はないし、時間もない。
「うわお! 手、舐められた!」
「神馬であろうと、馬はニンジン、好きだからね」
「よし。明日の金杯まで、手は洗わないっと」
「汚ね」




