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330 初詣? 妖の私が?

「初詣? 妖の私が? 変だと思うけど」

 と言うランを無理やり連れだし、競馬サークルR&Hは、京都藤森神社でお賽銭をあげていた。

 もう、ノーウェやアンジェリナの話題も、フウカの話題さえ出ることはない。



 あの日、お館様の御殿のお白州でフウカが語った後に、ハルニナはこう言ったものだ。


「だから最初に言ったでしょ。馬が教えてくれるって」


 京都競馬場、秋のG1レースの入着馬。

 覚えてる?

 こうよ。



 秋華賞

  一着 イトシノレイチェル、の「イ」

  二着 ウタエチョットマ、の「ウ」

  三着 ジェイピーゼロイチ、の「ジ」

  四着 ミンナノレイチェル

  五着 ニゲロアヤ


 菊花賞

  一着 ハクシュウノリキガク、の「リ」

  二着 レイチェルノウソ、の「ウ」

  三着 マコトノデンセツ、の「デ」

  四着 アレガハツコイ

  五着 ハクシュウノウワキ


 エリザベス女王杯

  一着 アイラブサリ、の「ア」

  二着 マモノノカタオモイ、の「カ」

  三着 ライラノロマンス、の「ロ」

  四着 ツレナイニニ

  五着 ワスレジノ


 マイルチャンピオンシップ

  一着 ルンチャッチャ、の「ル」

  二着 イコマファイル、の「フ」

  三着 ウソノカオリ、の「ウ」 

  四着 サリノオモイデ

  五着 オレガワルカッタ



 ね、それでね。


 各一着の馬名からは、ルリイア。

 各二着の馬名からは、フウウカ。

 各三着の馬名からは、デジロウ。


 という名が連想される。



「でも、外したよ」

 と、茶化すジンに、

「往々にして一番人気は来ないってこと」

 とハルニナは笑いを取ったものだ。


「もし、マイルチャンピオンシップにボクラノレイチェルが来たら、ルリイアの代わりにアイボリーとなるところだったし、ミリッサもアサツリもここに名を刻む可能性はあったんだよ。例えばアサツリなら」

「もう、意味ないし」

「じゃ、ミリッサの場合は」

「聞きたくないって」

 と、ジンが笑って切り捨てたものだ。


 それきり、あの事件の話題は封印されたわけではないが、誰も口にしない。

 フウカのフクロウにも草、つまり何らかの小妖怪が取り付いていたという。

 そいつが何者なのか、どうなったのか、誰も関心はない。



 むしろ、関心はR&Hの幸いな未来。

 次の三年生には、入部希望者がたくさんいると聞く。

 初めて他の学部からも。



 今、部長は欠員。

 春になれば、決まるだろう。

 ジンか、アイボリーに。もしかするとメイメイに。

 ランの可能性だってある。

 学校をやめると言い出しているが、さて、どうなることやら。

 きっと、残ってくれる。


 もちろん、実は妖怪だ、なんてことは、月隠の白君の御殿に集った者以外に知られてはいない。

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