328 妄想だろうがなんだろうが
実は、警察が先生を狙っていることは薄々気づいていました。
レオンからの情報が全くといっていいほど、入って来なくなっていたからです。
あの日も、レオンは競馬場に来てるのに、私にはあえて知らせてきませんでした。
近々、先生は再度、警察に事情聴取されるだろう。
重要人物として警察署に連れて行かれるだろう。
そう考えていました。
私に、ひとつの妄想が訪れました。
それなら、今日、一旦、先生には、警察にあの部屋から連れ出されてもらって、ミーティングを中止にするのがいいのでは、と。
でも、まさか、そんな乱暴なこと。
無茶苦茶な案です。
仮病を使ってでもミーティングを中止にするか、とも考えましたが、それだと、私は本当のことを話さず逃げただけ、になる。
気が進まない、というか、なんとなく嫌でした。
しかし、もう、ミーティングの時間が迫っています。
妄想だろうがなんだろうが、でも、警察頼み、もうそれしか。
十二レースが終わって、とうとう決断しました。
警察に通報しよう。
通報というより、なんていうんでしょう。
ノーウェ先輩を突き落とした犯人にさせられようとしている人がいる、とデジロウに伝え、レオンの耳に入れてきて、と。
ルリイア先輩とアイボリーのことが念頭にありました。
もちろん、二人の名前を出したわけじゃありませんし、出すつもりもありませんでした。
犯人にさせられようとしている人がいる、ニュアンスとして、濡れ衣。
デジロウを使うのは私。だから、先生がそうしようとしている、ということが伝わればそれでいい。
警察は、すぐに飛んできて、先生に任意同行を求めるだろう。
と。
私は、その場できちんと警察に抗議して。
部長としてやるべきことをやって。
そして、本当に嫌なんですけど、また親の力を借りて、先生を解放し……。
その間に先生に、今言ったことをすべて打ち明けて。
聞いていただいて。
真実が分かるものなら、それを教えていただいて……。
その上で、私自身はどうするか、考えようと……。




