327 そんな結論…… ありえない……
「そうです。あの日、デジロウから聞きました。午後のレースの最中に。先生とランが大蛇と話していた内容を。そう、さっきお会いしたオロチさんなのでしょう」
デジロウが教えてくれたこと。
自分がノーウェ先輩を襲ったと聞きました。
そこにオロチさんも同じ目的で加わっていたことも聞きました。
そして……、オロチさんが妖怪で、先生にとり憑いていたことも。
すごく驚きました。
これって、もしかして?
もしかして先生も私と同じようにノーウェ先輩を?
私がデジロウに愚痴ったように、先生はオロチさんに?
まさか。
ルリイア先輩やアイボリーのために?
あり得る?
絶対に違いますよね。
違って欲しい。
何が何だか分からなくなって混乱しました。
あの日は、調査終結の日。
結論を出す日。
でも、その結論は、なに?
どう持っていけばいい?
私と先生が、それぞれ、ロボットや妖怪に働きかけて、ノーウェ先輩を階段から転落させ、結果として先輩を殺した?
そんな結論……。
ありえない……。
先生、ごめんなさい。
先生を疑ったわけじゃないんです。
わかってください。
でも、そんな可能性をどうしても拭いきれずに……。
否定できる材料がなく……。
どんな結論になろうとも、私がデジロウに愚痴ったことは事実ですし、それが罪になるならその罰は受けるつもりです。
でも、でも……。
先生は……。
私が、デジロウに愚痴ったことをミーティングで話せば、デジロウはどんな反応をするだろう。
先生とオロチさんのことを……、話すかも……。
先生を引きずりこむことに……、なるかも……。
デジロウは自分の判断でどんなことでもする。
そんなロボット。
聡い子です。
私が話すことによって、先生に火の粉がかかるかもしれない。
そんなことをしていいのか。
デジロウの電源を落とす。これしかないと思い、そうしました。
でも、なぜか、電源が落ちないのです。
いえ、落ちているように見えるんですけど、稼働したままなんです。
普段、電源を落とすことはありません。なので、手順を間違っているのかもしれない。
それならとバッグに入れようとしましたが、暴れて入ろうとしません。
仕方ありません。デジロウをいつも通り自由にさせるしかありませんでした。
当時、先生がどんな結論を出されるのか、全く見えていませんでした。
もし、もし、誤った答えを出されるのであれば、私は質さなくてはいけません。
デジロウに愚痴ったのは私なのですから。
でも、本当にそれでいいのか。
それがいいのか。
火種をまき散らすことにならないか。先生に。
迷いました。
とりあえず、時間稼ぎをしなくては、と考えました。
こんな状態でミーティングに臨むことはできません。
めちゃくちゃなことになってしまっては、みんなに合わせる顔がありません。
それに、もし嘘の結論になったとして、私自身、納得できるのか。
できません。




