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324 好きとか、嫌いとか

 好きとか、嫌いとか。


 いろいろな気持ちがないまぜになって、ストレスが溜まりました。

 おかげですっかりスリムになりました。

 あれからも時々、先生が学生と一緒に帰ったりするのを見かけました。

 私は、いいことを思いつきました。

 みんながそうするなら、私は朝、先生と一緒にタクシーに。

 先生が迷惑がらないよう、雨が降った朝など、時々は。


 その……、数分間……。

 ちょっと……、だけ……。




 ノーウェ先輩の死。

 あの日、先生はものすごく取り乱され、落ち込んでおられました。

 実は、私はノーウェ先輩がどんな人か、いろいろなことを人から聞いて知っていました。

 ええ、大学でのことも、就職先でのことも。

 それなのに、先生は。

 ノーウェ先輩の死を心から悼んでおられるようでした。



 ずるい考えです。

 調査をすることになれば、ノーウェ先輩がどんな人だったか、先生も知ることになる。

 知ればいい。

 知ればいいんだ。


 ハルニナ先輩とも、ランとも、仲良くしている先生。

 ハルニナ先輩から出ているオーラ。

 ランの熱い視線。

 誰だって気づきます。

 それに、ルリイア先輩。

 なんと、先生にご自宅の鍵さえ渡しているのです。

 私が出る幕はどこにもありません。




 そして、マイルチャンピオンシップの夜。

 調査最後と決めていたあの夜。


 私は、事前に考えていました。

 もし、デジロウの関与が疑われるような事態になれば、私がさっき言ったようなことをすべて話そうと。

 それでどうしようとしたわけでもありません。

 話して、すっきりしたいというか。

 非難されても仕方がありません。

 それでも私を覚えておいて欲しいというか。


 もし、そんな方向にならなかったら、こう思っていました。


 アイボリーかルリイア先輩に疑惑は向いています。

 けれど、決め手はないし、私の中では、絶対に犯人ではありません。

 これまで分かったことを整理し、アイボリーやルリイア先輩に向かった疑惑を真っ白にした上で各自が判断し、それでいいじゃないか。

 部としての結論はなし。

 それで終わり。

 そうしようと。




 この間、事件の真相を知る、これとは別に、私の心は揺れに揺れていたことは事実です。


 ある日、先生が私にこう言いました。

 最初は、アイボリーは違う気がする。

 しばらくして今度は、ルリイアも違う気がする。


 気がする、ですよ。

 もちろん、私もそう思っていました。


 犯人であるという証拠は何もありません。

 でも、動機っていうんでしょうか、はある。

 あの段階で、排除できる証拠とか、根拠とか、何もないのに、気がする、と。


 私でさえ、すべての可能性をまだ残しておく段階だと思っていたのに。


 先生の言葉は絶対です。

 その先生が、あの時点で、気がするって、私に。

 それは、その方向では一切考えるな、ということなのだと思いました。


 いいえ、推理の方向を指摘されたことはどうでもいいんです。


 私が傷ついたこと。


 それって、先生は二人を好もしく思ってるってこと?

 ノーウェ先輩をそう思ってらしたように。

 ハルニナ先輩やランとあれだけ仲良くされてるのに?


 一体、どういうことなのよ。

 誰とでも平等に、っていうのはわかる。


 じゃ、私は?


 先生から、サークル運営以外のことで、この調査以外のことで、話しかけてもらったことのない私は?

 ミーティングの後、車で帰りましょうと誘った時も、あっさり……。

 話したいことはたくさんあったのに。

 二人で梅田のベンチに座った時も、そうです。

 先生は「私」を見てくれない。

 私の役割とか、ばかり話されて……。



 もう、ここまで話せば、分かっていただけますか?



 あの夜、デジロウが、ジンのトカゲを襲いました。

 ロボットのフクロウが。

 生き物を襲う?

 トカゲロボットを? 同じことです。

 ありえないことに、私は混乱しました。

 と同時に、デジロウが、警察が来ると警報を出した三四郎に腹を立てたのかもしれない、と思ったりしました。


 それから、もっと驚くことが起きました。


 先生がランと一緒にバルコニーへ。

 飛び降りたように見えました。

 ランは猫妖怪、とは知っていました。でも、まさか三階から飛び降りる?

 あり得ない、助けに行かなければ。

 血が凍り付いたような気分になりました。

 何が何だかわかりませんでした。


 でも、ハルニナ先輩やジーオ先輩がどんと座ってられる以上、見に行くわけにもいかず、結局その直後、チャイムが鳴り、警察が入ってきました。



 その間、結局、私はうろたえていただけです。

 なにも言えなかった。

 どんな役割もすることができなかった。


 先生に……。


 いいえ……。

 ……。

 ……。

 ……。


 ……、これ以上、お話しすることは……、ありません。

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