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323 先生は私を見て、分かったはずです

 アンジェリナ先輩の死体を先生が見つけた時。

 先生が、とは全然思わなかった。

 理由なんてない。

 ただ、信じてるというだけ。


 元々、ノーウェ先輩の死の真相を調べようと言い出したもう一つの理由。


 これは、信じてもらえないかもしれません。


 私を……。

 私に……。

 いえ、私のことを、先生に……。

 覚えておいて欲しかった。



 もうすぐ卒業。

 先生と会うことも少なくなる。

 会えないかもしれない。京都競馬場担当になるとは限らないから。

 忘れられてしまう。

 ……、覚えておいて欲しかった。

 そのために、なにか、記憶に残るイベントを、と常々思っていました。

 ノーウェ先輩には悪いけど、私のそんな個人的な思いつきもあって始めたこと。

 趣味の悪い思いつき、です。


 でも、デジロウのことより、本当はこっちの理由の方が大きいです。



 あの日、先生は倒れられて医務室に運ばれた。

 それからみんなで、ルリイア先輩の部屋に向かいました。

 ハルニナ先輩が腕を組んで。

 先輩がこっそり、メモみたいなものを先生の手に押し込むのも見えました。



 なんだか、悲しかった。



 ハルニナ先輩は、ノーウェ先輩と同学年。

 ハルニナ先輩が大学にいる期間が長いからなのか、こんなに仲良し。




 私が二年生の時、何人かが正門で先生を待ち伏せして一緒に帰ったりしてるのを知っていました。

 私も、ある日、忘れもしない、秋学期の最終日、クリスマスイブ。雪が降っていました。

 正門で先生を待っていました。


 先生は私を見て、分かったはずです。

 私が待っていたことを。


 私は、先生に近寄りました。

 でも、先生の後ろに、三年生がいました。

 はっきり言います。

 当時三年生のルリイア先輩が。



 先生はチラと目を向けてきただけで、何もおっしゃらず、そそくさとルリイア先輩を従えるようにして出ていかれました。


 その出来事が私の心をかき乱しました。


 ルリイア先輩が競馬サークルの部長をされていることも知りました。

 先生の授業はすべて受講すると決め、何があっても欠席しない、と決めました。

 そして、二度と先生を正門の前で待つことはしまい、と決めました。

 三年生になってすぐに競馬サークルに入りました。

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