320 そもそもの疑問
「俺にはそもそもの疑問があった」
仕方がない。
露払いをしてやろう。
せめてもの、せめてもの……。
教え子であり、サークルのまとめ役として手腕を発揮してくれたフウカへの、せめてもの救いの手。
「マイルチャンピオンシップが行われた日の夜」
あの夜も、俺たちはルリイアの部屋に集まった。
ノーウェ事件を解明すると意気込んでいた最後のあの夜。
何があったか。
警察が踏み込んできた。
俺を探して。
というか、拘束するつもりで。
なぜだ。
アンジェリナ殺害、ノーウェ殺害、ルリイア失踪、全部まとめて俺が犯人だと。
これが警察の見立て。
なぜだ?
この三つについて、警察が俺をマークするのはわかる。
そのどれにも俺は関係しているからだ。
最重要人物とされて、文句は言えない。
たとえ、いずれも俺は無関係だとしても、警察としては俺に話を聞かねばならない。
が、俺が不審に思ったのは、そのタイミング。
なぜ、あの夜?
ルリイアの部屋にいたから?
それが理由なら、その前の週も同じ条件だった。
何しろ、アンジェリナ発見以降、警察は俺をマークしていたんだから。
その前の週の段階でも、ルリイアの捜索願は出されていた。俺たちが知らなかっただけで。
なぜ、一週間後のあの夜に。
この疑問は、その後に起きた様々な出来事によってかき消されていたが、俺はやっと気がついた。
断片的な出来事や、何気ない会話などから垣間見えてくる。
見えてきたそのおぼろなものに、さっきのフクロウロボットの話を掛け合わせると。




