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315 この流れは芝居

 実は、この流れは芝居だ。

 オロチがあまりにすらすら話せば、疑念が入りこむ隙間ができる。

 追い詰められた上での話の方が信憑性が増す。



「ミャー・ラン殿」

「申せ!」

「ですが……」

「安心せい。お主をここへ呼ぶとき、お主が話すことによってお主の罪が重くなることはない旨、お館様には了解いただいておる」

「さようでしたか……」


 それでも、オロチは詳細を語ることを躊躇う。




 それ以上オロチを追求せず、話を前に進めよう。


「俺はさっきも言ったように、あの映像を何度も見直した」


 この世界には妖が身近にいて、人間と関係を持っていることを知った。

 そんな目で映像を見直した。

 人間が作った撮影機械に妖は映らない。

 それが基本。

 しかし、なにか、陽炎のようなものでも映ることがあるのではないか。



 前に言ったことがあるだろ。

 黒い点のような染みと、光が走ったような、と。

 画面の右端、一瞬だけ現れた黒い点。

 画面の幅いっぱいに現れた白い帯。


 その部分を何度も見直した。

 一旦停止にし、スローにし、コマ送りにし。

 静止画にし、拡大し、様々なフィルターをかけて実態を見ようとした。



 それらの作業は、少しだけ効果を発揮した。

 はっきり認識できたわけじゃない。


 黒い点は、オロチの鼻先ではないか。

 オロチがノーウェに襲い掛かろうとして、すんでのところで思い止まった、その瞬間ではないか。



 実際は、思い付き。

 そう見えたわけじゃない。


 黒い点はあくまで映像上のただのゴミのようにしか見えなかったし、白い光もやはり、データエラー。

 そう見える。


 しかし俺は、やがて確信を持つようになった。

 特に黒い点の方は、想像から確信へ、確信から真実に変わった。

 本人、そう、このオロチ殿から話を聞いたからだ。




 白い光の帯……。


 もう、みんな、わかるだろ。


 オロチ殿が白い蛇の姿となって飛んだのではないか。

 とか、龍の存在を知ってからは、白い龍ではないか、とか。


 三階から一階にかけて、階段を超スピードで飛び抜けた影ではないか。

 それが光と見えたのではないか。



 しかし、そうじゃないとすれば。



「オロチ殿、さっき話に出た、ノーウェの当日の動きについて、あんたの耳に入れた奴、ってのは誰なんだ?」

「申せぬ」

「まだ言うか!」

 と、ランの芝居。


「じゃ、○×で答えてくれ。その姿は白い大きな鳥ではないか」


 オロチは黙った。


「沈黙は諾と取っていいか?」

「オレは知らぬ。あのフクロウが何者か」


 ランも一応は目を吊り上げたが、もう、十分だった。

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