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310 無理やりこねくり回した論は捨てる

 部下であるルリイアに心を寄せている競馬場職員。

 アサツリという男。


 ルリイアを自分の部下のように扱うノーウェに怒りを抱いていた。

 かといって、己は何もできない。

 財団職員の横暴を質すこともできない自分。

 それほどの勇気さえない己が恨めしかった。


 しかし、チャンスが来たかもしれない。


 ノーウェが着ぐるみに入る。

 なんとかして、懲らしめることができないか。

 殺そうとまで考えていたわけではないだろう。

 そんな度胸はない。

 そこまで肚の据わった男ではない。


 ならば、ルリイアと共謀して。

 階段を転げ落ちれば。


 カメラの映像には出てきたが、時刻が少し違うし階も違う。

 直接的には手は出せない。

 あるいは、さっき言ったセンサー代わりのリモコンみたいなものを持って?


 でも、あり得るか?

 ルリイアとアサツリが結託して?

 ルリイアが相手にするか?

 しないだろう。



 この件については、後でもう一度話す。

 結局、ルリイア単独犯行説に戻る。 



 で、どうなる?

 どのパターンも、着ぐるみに何らかの仕掛けが施されていたことが前提となる。

 その瞬間に誰も映ってないんだから、当然だよな。



 どう?

 可能性ある?

 時限装置をセットし、モーターか何かをセットし、ワイヤーやらフックやらボルトに細工し。

 一週間の間に。


 そして 転落直後にそれらを撤去し。


 どうやって撤去する?

 いつ?

 あの直後、ノーウェを着ぐるみから出そうと、皆で躍起になったんだ。

 警察官がいっぱい見守る中で。

 いつできる?



 俺は、ありえないと思う。

 着ぐるみの仕掛け。

 警察を信じよう。プロが痕跡を発見できなかったんだ。

 無理やりこねくり回した論は捨てる。

 完全に排除する。


 じゃ、なんだ?



 そのころ、俺は俺で、わけがわからんいろんなことが起きて、まあ、あれだ。妖怪沙汰とかいろいろ。

 ノーウェ事件をまともに考える時間がなかった。

 アイボリーやルリイアの疑惑は整理もされず、深まることもなく、まあ、なんというか、放置されたままになった。

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