308 薄紅色が感情を見えにくくして
「じゃ、再開だ。眠たくなっても寝るなよ」
ちょっとだけ復習しようか。
スポットはルリイアとアイボリーに当たっている。
二人にはノーウェを憎む理由がある。
しかも、ノーウェがケイキちゃんの着ぐるみに入ることを仕組み、実際にそうなったことを知っている。
まずアイボリーの方。
遅刻はしてきたが、実際はかろうじて間に合ったといえる。
そんな絶妙なタイミングで現れている。
ノーウェが転落した時点では、競馬場に来ていたし、むしろその現場に向かっていた。
しかし、ノーウェが転落したちょうどその時、監視カメラにアイボリーの姿も痕跡も、なにもない。
ルリイアの方。
階段の上にノーウェを残して、その場を離れた。
その後の行動は、俺たちは確認していないが、警察はがっちり裏を取っているはずだ。
アイボリー同様、監視カメラに捉えられていない。
ただ、こちらは、俺にとり憑いた蛇と話している。事件の前に何度か。
これらのことから推測できるパターンは複数ある。
列挙する必要はないと思うが、一応、挙げておこう。
あくまで仮の組み合わせだ。
「単なる可能性の羅列。事実かどうかは、別問題。反応無用で頼むぞ」
ルリイアとアイボリーを前にして話してるんだ。
そこのところ、わかってくれ。
ルリイアもアイボリーも顔色を変えない。
風呂上がりのほてりは収まってきてはいるものの、その薄紅色が二人の感情を見えにくくしているだけかもしれない。
他の者もあえて二人を見ようとしない。
床に目を落とす者、窓の外を見やる者、飲みかけのグリーンティーを透かして見る者。
それぞれのやり方で、思い思いに、これから語られることを静かに待ち受けている。
「まず、アイボリー主導パターン」
と、言い出したものの、実際は、直前まで逡巡していた。
話す必要があるだろうか。
まず大丈夫だと思うが、アイボリーとルリイアが不測の行動に出ないか。
あるいはジンが突拍子もないことを言いださないか。
心配だが、やはり話しておく必要はある、と思い直したのだった。




