307 緩い空気感が続く
ヨウドウが言ったように、話の持っていき方はむつかしい。
損な役回りだ。
しかし、そうも言っていられない。
では。
と、
ここで再び、失礼します。
はい、どうぞ。
子狐が外郎を持って入って来た。
もう一人は、グリーンティーのポットとグラスを。
外郎はすでに人数分×二にカットしてある。
ジンが真っ先に大皿に手を伸ばした。
「ボク、これ、好物。うわ、プリプリ。失敗した! さっき、パインアイス、食べなきゃよかった」
緩い空気感が続く。
「妖怪の国って、なかなか」
「気が利いてるよね」
「妖怪だからって、バカにしてた?」
「バカにしてたわけじゃないけど、まさかこんなに洗練された世界だとは思ってなかったわよね」
「文化という面では、人間と同じ」
「そうなんだー」
「知らなんだー」
「びっくりしたー」
「今、気づいた。ここって、もしかして」
「なになに?」
「竜宮城とは、ここのことだったりして」
「それじゃ、帰れないじゃん。帰ったら、お婆さん」
「それにしても、この外郎、めちゃめちゃ美味しいね」
「グリーンティーも」
「絶妙な甘み。お上品」
気合が入らないこと、甚だしい。
なるほど。
殺人事件の解決遍。
こんな陰気な話、誰だって聞きたくはないのだ。
本当は。
「ねえ、ラン。いつもこんな感じ? ごちそうの朝ごはんに温泉。和菓子のご接待」
ガリさえ、この調子だ。
「まさか。今回は特別なお客様扱い、だと思います」
「なぜ?」
「それは」
と、ランの目がこちらを向いた。
変なこと、言うなよ。
祝言がどうのこうの、とか披露宴代わりとか。
「さあ! そろそろ」
と、ハルニナが手を叩いて、喝を入れてくれた。
「再開しよう」




