305 子狐の後ろに行列を作って
「ところが、とんでもない事件が起きた」
紅焔山の白骨死体。
俺は、絞殺されたアンジェリナを見つけてしまった。
「後に、これはノーウェによる殺人だと分かった」
「えっ!」
鋭い驚きがヨウドウから発せられた。
ヨウドウだけではない。
フウカもジンもアイボリーも。
表情を変えないのはランとガリのみ。
「この話も後ほど、だ」
「おい! ミリッサ、ちょいと回りくどくないか? お前の話。行ったり来たり」
「時間はたっぷりあるんだろ。俺が当時考えていた順番で話をさせてくれ」
その方が話しやすい。
皆にはわかりにくいかもしれないが。
特にヨウドウやガリには。
「わざとじらしじらし、してるだろ」
「違う違う。頼むから、黙って聞いてくれ。ここからが本番なんだから」
「やれやれ。こりゃ、洞窟風呂どころじゃないな」
ヨウドウの見るからに気落ちした顔。
そうか、ここでいったん頭を冷やすという手もあるな。
「じゃ、トイレタイムにしようか」
「そうね」
ランも頷く。
と、失礼いたします。
襖の向こうで声がした。
「はい、どうぞ」
襖が開くと、かわいい子狐が二人。
「お風呂に、ご案内、させていただきまする~」
「えええっ」
「おお!」
「わーい」
「え、ホント?」
「やたー」
「それなら、ご飯食べる前に入りたかったな」
「じゃ、ジンは入らない?」
「なんで? ボクも連れてってよ」
ちょっと待て!
待たんかい!
もう一人狐が現れた。
おお、谷川乃蛍殿。
「今朝は男湯と女湯を入れ替えておりまして、ミリッサ殿もまた新たな趣をお楽しみいただけるかと存じます」
なっ。
ということは、女湯があるにもかかわらず、ランは入って来たということか。
ええい!
そんなことはどうでもいい!
「おいおい、まさかみんな、風呂入る気か?」
「こうして狐殿がお誘いしてくれてるんだ。辞退など、そんな失礼がどうしてできる?」
「それは」
「俺は行くぞ」
「お着換えの方は、いかがさせていただきましょう」
「いえ、お気遣いなく。このままでいいので」
「浴室備え付けのものはご自由にご使用くださいませ」
もう、全員が立ち上がり、かわいい狐の後ろに行列を作っていた。




