3 プロローグ 弐の弐 何者を封するつもりじゃ 愛とやらで
「へっ。おめえ、齢たかが七十ほどじゃろう。小娘がっ」
老婆の目は炯々として、それなりの力を有する者であろう。
「小娘ならそんな言葉を好むやもしれぬの。まあ、よい」
「ああ、頼みたい」
黒や白の玉石、美しく削られた色とりどりの木片、水晶玉や閉ざされた二枚貝などが並べられてある。
一段高い棚には、翡翠の勾玉、石製の箱や木箱、石刃、青銅の鏡など。
文様が描かれたものも多い。
「この袋でよいのじゃな。そう長持ちはせんが、百年はもつじゃろう」
ポイと銀の盆に載せた。
「で、何者を封するつもりじゃ。愛とやらで。お代は前金でいただくぞ」
「ええ。少々、細工もしてもらいたい」
「ん?」
「この紐を通してほしい」
「んん?」
「ほら、首に掛けられるように」
老婆は今度ははっきり嫌な顔をした。
「おめえ、そんなことをして何に使うつもりじゃ。これは」
「わかっている。妖や鬼、霊魂や気と呼ばれる力、精霊や神仏までも、そこに書かれた言葉によって封することができるもの、だろ。で、もう一つ細工を」
ますます顔を歪める老婆。
「閉じ込めるんじゃなく、住まいとすることもできるわけだろ」
「いってえ、おめえ」
「私の住まいにする。わかったら、さあ」
呪術師の歪んだ顔が徐々に憐れみを帯びてきた。
「やれやれ、今時の若いもんは何を考えておるのか」
と、白髪交じりのぼさぼさ髪をしごいた。
「大枚はたいて何のために」
と、小屋の奥へ消えた。
待つことしばし。
「入って参れ」
と、張りのある厳かな声。
「人の姿じゃいかんぞ。おめえの大元の姿でじゃぞ」




