296 私は全然さすがじゃない
次々に手渡される見舞いの品に、スペーシアはまた泣きだした。
「泣かなくていいよ。きょうからリハビリ、頑張るんだろ」
「そうじゃなく、なんていうか、うれしすぎて。だって、ここは」
びくりとした。
だってここは、どこだというのか。
「妖怪のお屋敷だよ」
だから?
ここの印象が、スペーシアの今後の言動を決める。
祈るような気持ちになった。
スペーシアのためにも、月隠の白君はじめ、妖怪たちにも、そして自分にとっても。
「妖怪の国まで、みんな、来てくれて……」
「当然だろ」と、ジン。
「でも、普通じゃないよ。妖怪の国だよ」
「妖怪の国だろうが閻魔大王の御殿だろうが」
「う」
スペーシアが本気で泣きだした。
「だって」
「だって、なんだ? お見舞いに来たからって、そんなに泣かないでも」
「だって」
「行けないところならまだしも、行けるっていうんだから、来ただけのこと」
「妖怪の屋敷なのに?」
「先輩、しつこいな。なんなら、見舞いだけじゃなく、リハビリ、付き合ったげようか」
「ごめん」
「いいからいいから。遠慮しなくていいし。ラン、ダメかな」
「どうぞ。お館様も喜ぶと思う」
スペーシアが、あ、という顔をした。
「ラン。お館様にはくれぐれもお礼を言っておいて欲しい。さっきも来てくださって、いろいろ話しかけてくださった」
「へえ!」
「九本の尻尾で私の体中、撫でてくださって」
「へえええ!」
「何とも言えないいい気持になって、ガンガン元気出て」
「最高の誉れやん! 尻尾に触らせてもらうだけでも激レアな栄誉やのに!」
「へえ! そうなのね!」
「さすがスペーシア」
と、これはヨウドウ。
この分では、もしここに妖怪が現れても、たいした騒動にはなるまい。
そういえば、さっきの看護師、完全に人の形をしていた。
初心者向けに配慮してくれていたのだと、今更気づいた。
「さすが、なのは私じゃない。ランや先生や、みんながさすが。私は全然さすがじゃないし、むしろ……」
スペーシアが涙ながらに語ったこと。




