294 さかんにキュッキュ、キュッキュいわせ
「誰かとすれ違っても、おどおどするなよ」
スペーシアの病室へ向かう廊下。
先頭はラン、殿は俺。
行列はどことなく緊張の足取り。
「あくまで自然体で」
そう言ったことがかえって緊張を生んだのだろう。
アイボリーとガリの足取りが固い。
そして全員無言。
ここでおしゃべりしながら行くのもどうかと思うが、静かさがさらに緊張を高める。
スペーシアの反応を予想すれば、なおさら。
「うおっ、ここ、鴬張り」
と、ジンの声。
皆でさかんにキュッキュ、キュッキュいわせ、緊張が少しほぐれた。
「ところで先生、どこにいたんです?」
と、聞いてきたジン。
そう。
今日、ここで話し合う。
ケイキちゃん事件の、今日こそ本物の推理会議。
面子が二人増えているが、まあ、いいのだろう。
「後でな。お見舞いの後で」
ランが振り返って、頷いた。
場所も用意してくれてあるのだろう。
今度はヨウドウが話しかけてくる。
「俺も出ていいか?」
「もちろん」
見れば、アイボリー、ヨウドウと手を繋いでいる。
父と娘。
なんとなく、うれしくなった。
うれしくなったついでに聞いた。
「フウカ、フクロウは?」
「修理できないと言われて……」
「そうか」
それにしても、よくガリが来てくれたものだ。
というより、ランがよく誘ったものだ。
「ガリさん。すみません。こんなところにまでご足労いただいて」
「先生。それ、違いますよ。誘っていただいて、うれしくて」
「いえ、僕じゃなく、ランが」
ガリに嘘は通じない。
「本当を言うと、ちょっとびっくりしました」
「あら、私が来たことが? 心外」
「はあ。すみません」
「私が、競馬サークルR&Hをどんなに応援してるか、ご存じないの?」
「え、そうだったんですか」
「あらまあ。ね、ヨウドウ先生」
ヨウドウはニヤリ。そして胸を張った。
「実際、火の粉はいっぱい振り掛かってるんだ。お前は知らないだけで」
「そうだったのか……」




