290 俺にそんな人気はない
「ところで、今回のこと。つまりミリッサのこと。皆にどう説明すればいい?」
昨夜、説明に困ったという。
「アイボリーはPHだから、ランの仕立てた百鬼夜行を見た。彼女に説明はできると思うけど、ヨウドウ先生やフウカやジンには、どう説明すればいい?」
それはもうはっきりしている。
「すべて話してくれていい」
スペーシアは妖怪の館にいるのだ。
妖怪の存在を隠し通せるものではない。
「むしろ、俺から話したい。いい手はないか?」
あの日、ルリイアの部屋に警察が来た。
ランに抱えられてバルコニーから飛んだ。
これをジンも見ていたはず。
彼女は何と思っただろう。
そして、警察になぜ追われることになったのか。
なぜ、捕まったのか。
それ以降のことは。
ほとんど何も知らないのだ。
聞かされていないのだ。
これは仁義に反するのではないか。
教え子に対して不誠実ではないか。
どうしても話せないならともかく、ランも秘密にしようとは思っていないのに。
「どこかで会えないか?」
「うーん。リモートじゃだめ?」
「ダメだな。最終手段としてはあるけど」
ここコアYDやUDではだめなのか?
とは思うが、だめなのだろう。
可能なら、ハルニナは最初からそう言うはず。
コアは隠されていなければいけないのだ。
「学校は? 意表をついて。守衛のおじさんは断固として警察を学内に入れないよう頑張ってくれるかも。学生もバリケードを張って」
「面白いね、ラン。でも、残念ながら、俺にそんなカリスマ人気はない」
「ううん。いけるかも」
「ダメだろ。学校に迷惑をかける」
ハルニナの案。
「じゃ、大阪湾のど真ん中は? フウカの家、クルーザー所有してるって聞いたことがある。そこにあいだみちに口を開いてもらって」
「いい案だけど、警察は俺を認知するだろ。俺だけ消えても、後で皆によけい迷惑がかかる」
「それにさ、あいだみちって、どこにでも口を開けるってもんじゃないし。地面だけ。それができるんなら、派手な救出作戦なんてしなくてよかったわけだし」
「あ、そうだったんだ」
「どこにでも結界張れる妖怪もいるけど、そこに人間がたくさん入って、なんて言ったら断られるやろし」
妙案はなかなか浮かばない。
「リモート、しかないか」
「そうねえ。別にその体じゃなくてもいいんでしょ。最近売り出された、ほら、なんていうのかな、人の意識を乗せることのできるペットロボット、買ってくるから」
「ロボットねえ。ま、それでいくか」
ランがぽつりと言った。
「お館様のお屋敷で、って、どう?」
「えっ」
「でも」
「どうせ、スペーシアは向こうであったことを喋る。それなら、いっそのこと、皆を連れて行っても同じことやし」
「同じことって、おいおいおいおい」
「あかんかな、ヨウドウ先生やフウカやジンは」
「ジーオもどうする」
「そか。まあ、お館様がどう言うか、分からへんけど」
妙案だが、さすがにそれは。
と、メイメイが駆け込んできた。
「大変! ルリイアが!」
「どうした!」
「ハジカミが!」
「えっ!」
殺されたのか?
「淀の坂作戦に」
「なんだ?」
「ごめん。言っておけばよかったかな」




