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289 七人衆で立ち向かえる?

 案の定、ハルニナは激怒していた。


「いったい! あんたたち! なにしてくれるのよ!」


 スペーシアが目覚めるまで、今日はコアYDにいようということになった。

 外の様子ももちろん気にかかるし、ハルニナにも詫びねばならない。


「コアUDで、喫茶店に入って……」

「理由なんてどうでもいい! どうして出て行ったのかなんて、今更聞いても意味ない!」



 ハルニナの怒りはもっともだ。

 弁解の余地無し。

 ましてや、偽祝言のことなどもってのほか。


「スペーシアを連れて行ったでしょ。最悪!」

「すまない」

「ミリッサじゃないわ。ラン! どうするつもり!」

「明後日には傷は回復して」

「そういうことじゃない! 彼女は」

 と、ここまで言って、ハルニナは涙声になった。



「彼女は……。仕方ないか」


 泣いていた。


「お館様との取り決めがある。いえ、古い古い盟約。互いに認め合い、かつ干渉しない。でも、いざというときには相互に支援する。そしていよいよの時には共に戦う」


 いよいよの時が来るかもしれない。

 スペーシアの言動いかんによっては。


「お館様の気持ちはよくわかってるつもり。人間界でのいい意味での存在感を増したいという気持ちは。でも、それは今?」


 人工知能がどうのこうのって、浮かれている今?

 大雑把に言えば、人類の文明は絶頂期。

 大戦はないし、宇宙からのコンタクトに怯えることもない。

 そんな今?


 今、やれPHだ、やれ妖怪だなんて言って、誰が信じる?

 誰がまともに受け取る?


 お館様を非難してるんじゃない。

 心配なのよ。


 PHと違って、お館様は妖怪界では絶対の存在。

 それが緩んでしまうんじゃないかって。

 思惑が外れた時に。



 私はミリッサが好き。

 ランもミリッサが好き。

 でも、そんな個人的な、ちっぽけなことじゃなく、妖怪界のタガが外れてしまったら?


 タガが外れるところまでいかなくても、お館様の威光が薄れた時。

 古の時代に封印された者たちが、一体、二体と結界を超えて出てきたら。

 すべてのことに憎しみをたぎらせた連中が出てきたら。

 考えただけでも恐ろしくなる。



「ラン。七人衆で立ち向かえる? できないでしょ。瞬殺。PHだって、ただの人間」



 人間に害を為す者を長い年月を掛けて封印してきたのだという。

 溜まりに溜まった憎しみは増幅し、もはや、たとえ九尾の狐でも手に負えなくなっているはずだとハルニナは言う。


 むろん、俺に実感はない。

 それどころか、映画の見すぎだろ、としか思えない。

 でも、ハルニナの本気度は鉄が沸騰するほど熱い。



「ミリッサには分からないでしょうね。妖怪界は滅びPHも滅びる。それでも人間を救うことはできない。妖怪界とPHの盟約があったとしても」


 ハルニナ、ちょっと大げさすぎるんじゃ?

 聞いてて疲れてきた。

 ランは神妙な顔で黙っているが、それがハルニナの鉾の収めどころをなくしているのかもしれない。


「ハルニナ。怒らないで聞いてくれ。その話、今、しなくちゃいけないことか? スペーシアがどんな行動に出るか分からないが、だからと言って、あそこに閉じ込めておくことはできないんだから。それはその時、ってことじゃいけないのか?」



 ふう!

 と、ハルニナが強くため息をついた。


「そうね」


 こっちも、フウ、だ。


「で、今日一日、匿ってくれ。明日朝、ラン、向こうに連れて行ってくれるか。スペーシアに会わなくちゃいけない」

「私も行くよ」

 と、ハルニナ。

「お館様と話し合わなくちゃいけないし」

「来てくれるか。助かる」

「ランは来なくていい。私が案内していくから」



 ハルニナが今日初めて微笑んだ。

「ミリッサとランで、スペーシアを抑えきれるかな」

「さあな。でも、分からんさ」


 そうね、とハルニナが話題を変えた。

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