180 なーんの役にも立たないって人
「なるほど。でも、どうなんでしょう、それって。あなたたちだけじゃなくて、イベント会社の社員はいなかったんですか?」
はい。
会社の社員って、実は、いないと思うんです。
家族経営ですから。お会いしたことがありません。
いつも、私たちアルバイトだけ。
社長は、イベント中に顔は出されますけど、基本的にアイボリーに任されてるようで。
叔父、姪の関係だからでしょうか。
アイボリーはアルバイトだけど、実際は社員みたいに責任を、言い方は悪いですけど、負わされてるみたいで。
「財団の方は? ノーウェさんだけ?」
いえ。
上司の方もいつもみえられてます。でも、現場はすべてノーウェさんが仕切ってられるようでした。
私もお話ししたこと、ありませんし。
言っちゃ悪いですけど、いつも、そのあたりをぶらついておられて。
現場に、おられたりおられなかったり。
あの日も、ノーウェさんはすごい剣幕で、私やルリイアさんを叱られましたけど、上司の方は、その間、なんら指示らしきことも、アドバイス的なこともおっしゃいませんでした。
私は会社のアルバイトとして、少しは責任はあると思いますけど、ルリイアさんには責任はないですよね。
でも、ノーウェさんはそんなこと、お構いなしです。
まあ、なんていうか、罵倒ですね、あれは。
「へえ。じゃ、競馬場の関係者の方は?」
いつも、ルリイアさんの上司の方がみえられます。
その、すったもんだしているときも傍におられました。
でも、この方も、なにもおっしゃいませんでした。
赤い顔をして、相当頭にきてらしたとは思いますけど、ルリイアさんが自らアシスタントをするとおっしゃられたものですから、きっと、その意思を尊重されたのだと思います。
と、
ミアは、嘘をついた子供のように、舌を出した。
ということにしておきます。
「え? どういうこと?」
まあ、あれですよ。
はっきり言って役立たず。
お二人とも。
あれほど、ノーウェさんが周囲に当たり散らしていても、ルリイアさんが罵られていても、結局、なにひとつおっしゃいません。
肩を怒らしていても、いざというとき、なーんの役にも立たないって人。
その典型。
私はそう思っています。
「そうなの……」
特に、ルリイアさんの上司。
目つきだけはちょっと怖い。ですから、誰も近づきません。
挨拶さえしません。
実際、私もお話ししたことありませんし。
本当のことは知りませんけど。
アサツリのことだ。
さもありなん。
そうか、顔を赤くして怒り狂っていたのか。
俺には、部下を守るのは上司の役目などと言っておきながら、ルリイアを守るわけでもなく……。
財団相手では手も足もどころか、口も出せないとはな。
陰険で小心。
ルリイアも苦労するわけだ。




