281 その親にしてその息子あり、よね!
「ということだったのよ」
「なんて自分勝手な」
「その親にしてその息子あり、よね!」
いずれにしろ、キオウミの話が真実だとすれば、先ほどのジンの推理は破たんすることになる。
キオウミの事務所と転落現場では、かなりの距離がある。スタンドの南端と北端だ。
ケイキちゃん転落現場から事務所へ戻る時間と、ケイキちゃんが階段に倒れているのが発見されるのと、どちらが早いだろう。
あの清掃員に聞けば、キオウミがその時間帯、事務所にいて指示を出していたことがはっきりするだろうか。
「それにしても、なんだよ。逆恨みなんて言うなら、最初から言うなよ」
ジンは自分の推理を蒸し返しはしなかった。
ただ、完全に怒りモード。
「腹立つ。すべて自分の側からしか、ものを見てない。よくしてくれまして、だって! それが人を判断する決め手かい! そんなんなら、嘘にまみれた犯罪者でも、自分に都合のいい人はいい人だってことになるぞ」
と、収まらない。
「そんなんなら、興味ないことは断る奥さんの方がよっぽど」
トカゲの三四郎も、そうだと言わんばかりに頷いている。
「視点、ずれてない?」
と諌められて、ようやくジンは黙った。
ブスリとして、冷めかけたパスタを一気に啜りこみ、これまた冷めかけたコーヒーをがぶりと飲んだ。
「ちっ、いやなやつ。クソー。さ、切り替えよ。おいしそうなケーキにアタックだ!」
「アタックしなくていいから。普通に食べなさい」




