279 ええ、ええ、胸騒ぎはしましたよ
「ピンポイントの時刻、つまりノーウェ先輩が亡くなった時のこと。これも聞いてみようと思ったけど、会議後の立ち話でしょ。さすがに聞きづらくて」
しかし、キオウミから語ってくれたという。
あの日、いつものように、朝からずっと事務所でスタッフの動きを見ていました。
イベントで事故があったと聞かされた時、うちのノーウェが、とは夢にも思いませんでした。
事務所から、そのエリア周辺の清掃員に作業を中止するよう、伝えました。
ごみ集積場所の係員にも、ゴミをそのままにしておけ、と指示を出しました。
なぜかって?
その時点で、私にはどんな事故なのか、情報は上がってきていませんでした。
何があるかわかりません。
警察から、要請があるかもしれません。
重要な何かを、ごみとして収集しているかもしれません。
しばらくして、どうも人が死んだらしいという情報が入りました。
続いて、それが財団の職員らしい、というのです。
ええ、ええ、胸騒ぎはしましたよ。
ノーウェが来ているのは知っていましたし。
と、ここでキオウミは、何を思ったのか、ルリイアを手招きしたという。
先ほどまでいた会議室で続きをと。
「ちょっと躊躇したわ。さすがに」
しかしルリイアはキオウミについて会議室に戻った。
もちろん、ドアは開けたまま。
かなり離れた席について。
「どうも、先ほどは……、私の、その……」
そう言ったきり、キオウミはしばらく何も言わなかった。
天井を見上げたかと思うと、テーブルの上をなぞるように目を動かし、手を開いては閉じ、手の平を見たり。
そして、こんなことを言い出したんです。




