278 なにか、私の働きにご不満でも……
「さすがにムッとしたけど、顔には出さなかったよ。こっちは情報収集だからね」
ルリイアは、あ、そうそう、忘れるところだった、と、スーパーの袋からケーキの箱を取り出した。
「きっと今日は、遅くまで頑張るだろうから」
「いいのに~。さっき十分頂きましたし」
「まあまあ、そういわずに。これでも私、それなりの高給取り。安いケーキだし」
アイボリーが受け取って、切り分けに行く。
じゃ、とジンも立つ。
「へへ、勝手知ったるキッチン。紅茶がいい? それともコーヒー?」
ルリイアは、あの日のキオウミの行動も聞いてくれていた。
これにもキオウミは目を剥いたらしい。
あの、そのご質問は、なにか、私の働きにご不満でも……。
弊社としたしましては、云々。
私の役割といたしましては、監督者という立場で、云々。
京都競馬場の清掃人員はG1レース開催日で一日延べ百うん十人。
各エリアに配置され、休憩時間を挟みながら、スタンドや立見席、屋外の各所や飲食エリアなどを清掃して回っては、ゴミの中間集積所との間を往復する。
それをキオウミは事務所に陣取って、GPSを使って監視し、指示を出しているのだという。
昼休み?
そんなもの、ありませんよ。
昼休みはお客様のゴミが大量に出るんです。あ、失礼いたしました。ご承知ですよね。
スタンドであろうが食堂であろうが、競馬場のいたるところでゴミが出る。
これをすぐその場で回収しないと、散乱して後の始末が悪い。
ごみ箱は設置してあっても、入れない輩もいるし、そもそもそれだけ大量のごみを入れる容量がない。
動けませんよ。事務所から。
時には、私自身、現場で清掃作業をします。
事務所ですか? 私の詰めている?
ビッグスワンの、あ、いやステーションサイドの南の端、一階キッズルームの裏の一室をお借りしています。




