277 なにか、気持ちの、そのう、すれ違いでもあったのかと
ルリイアからも報告があるという。
「さっき話題に出たキオウミさん。ノーウェ先輩の義理のお父さん、清掃会社の課長さん。彼に会ったから、その時のことを」
ジンが前のめりになった。
「いよいよ真実が語られる。ワクワク」
「先走らない。そんな話なら、前置きなしにさっき話してる」
先生、ごめんなさい。
一緒に、って思ってたんですけど。
全然、構わない。
むしろ、ありがとう。
「今日、会議があって、キオウミさんも参加してたんです。会ったのにお悔やみを言わないわけにもいかず」
で、聞いてみたという。
「息子さんとノーウェ先輩はどんな感じでしたか?」
キオウミは目を剥いたという。
「どういう意味でしょう」
「ユーリーさんが再婚されると聞きました。ノーウェ先輩は相思相愛だっておっしゃっておられましたので、なにか、気持ちの、そのう、すれ違いでもあったのかと」
ところが、驚くことに。
キオウミさん、こう言ったんです。
申し訳ないが、おっしゃっておられる意味が分かりません。
相思相愛、それはノーウェの側から見たらそういうことになるんでしょう。
まあ、はっきり言うと、うちの息子は騙されたようなもんですよ。あの女に。
こう言うのもなんだが、うちの息子は安全牌みたいなもんだったんですよ。
嫁が遊び呆けるためのね。
他所にも男を作っていたようだし、給料も一銭たりとも家に入れない。
生活費もマンションのローンも、すべてうちの息子が負担。
あの女は給料を、己が遊ぶためだけに。
いや、つまらない話をしてしまって、申し訳ない。
キオウミさんは真っ赤になって謝って、頭を下げられました。
そりゃそうでしょう。
私はJRAに勤めていて、キオウミさんの会社に業務委託している立場なんですよ。
いくら私が娘のような年頃だとしても、失礼でしょう。
いきなり、嫁批判をぶち上げられてもね。
ルリイアは大きくため息をついた。
目にクマを作り、肌艶も悪い。
最近、激務なのだろうか。
ルリイアは仕事のことを口に出さないが、清掃員の言葉が蘇ってくる。
歳の離れた清掃員の女性からお褒めの言葉をいただくほど、ルリイアは頑張っているということだ。
思い出した。
名は……。
そうだ、アサツリ。
ルリイアの上司。
なにか、トラブルでもあったのではないか。




