274 アナザーストーリー
「さっきのボクのストーリー。アナザーストーリーもあるよ。聞いてくれる?」
アンジェリナから話題はそれていった。
ジンは、いつも肌身離さず身に着けているポシェットからトカゲを取り出した。
「お、久しぶりにその顔見るね」
「うん。なにか、機嫌悪いみたいで」
「機械の調子?」
「ううん。体調が」
「ロボットに体調なんて、あるんかい」
「フウカのフクロウも見ないね。体調が悪い?」
「そんな話、どうでもいいから」
「でも、三四郎の声、聞かないと調子出ないんだよな。ね、三四郎」
トカゲは、くるりと目の玉を動かしてジンを見上げたが、結局、なにも言わなかった。
さあ、と促されて、ジンが語り出す。
「時は遡ります。あ、勘違いしないでね。あくまで推測のアナザーストーリー」
ノーウェ先輩とユーリーとの結婚披露宴。
アンジェリナ先輩が宴をぶち壊しにするその前。
キオウミは新婦の会社の連中が陣取るテーブルに、見知った顔があることに気づいた。
ツータックの方も然り。
お、あいつ、高校の同級生じゃないか。懐かしい。こんなところで。
披露宴以来、旧交を深めた二人。
ある日、ある飲み屋で、ノーウェの話題になった。
うちの女房が、嫁を気に入らなくてね。
僕もあいつ、あ、ごめん、おたくのお嫁さんには散々な目にあって。
「ということで、事件当日、ノーウェ先輩がケイキちゃんに入ることになったタイミング。キオウミはツータックから聞いたんじゃないかな」
「それって、本当? 高校の同級生って」
「知らない。例えばの話」
「いい加減な」
「年齢、合わないでしょ」
「だから、同級生っていうのは一瞬の思い付き。そこ、突っ込まないでよ。何らかの接点があって、ということじゃん」
「こだわるなあ」
「だって、双方にお得だよ。キオウミは情報を得る。ツータックは自分の昇進に落とし穴を作りかねない部下を亡き者にすることができるんだから。しかも、自らは手を汚さずにね」




