表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

2/197

2 プロローグ 弐 今の姿のワシを

 世は太平。

 年寄りの自殺が増えたからといって、人が幾人か絞め殺されたからといって、それがどうした。

 ワシはそう思うのだが。


 今、北陸路のとある集落の屋敷。

 ワシをワシと認めることができる老婆とともに住まいをいたしておった。

 老婆が死んで幾十日。

 人の住まぬ屋敷はたちまち廃れる。

 空腹と退屈がこんなワシにも忍び寄ってくる。



 そんな折。


 きしむ戸を開けた者がいる。

 そろりと入ってきた娘子二人。


 荒れ果てた家にどんな用があるのか。

 獣か妖しか住んでおらぬ廃屋に。


 大きいの、細かいの、二人して、屋敷内をうろついておる。

 はしゃいだ声を出して。

 居間から台所、奥の間、離れへと、一体何を探しているのやら。



 む。

 なんじゃ?


 大きい方の娘っ子が、しゃがんで手招きするではないか。


 ワシを?

 見える、のか?

 ワシを?

 この姿のワシを。


 フン。

 ここは逃げるにしかず。


 むむ。

 いや、待て。


 見覚えがあるような。

 この娘子……。



 益体もない。

 退散じゃ。



 ここまでは追ってこれまい。


 それにしても……。

 うむう……。

 面影があるような……。

 幼子だったころ……。



 まあよいわ。

 ワシもここに巣食うて歳月が経った。

 そろそろ飽きてきたころ。


 ひとたび、人の世に慣れれば、もはや戻れぬ。

 こやつらに着いていくのも一興やもしれぬ。

 むろん、悟られず、人知れず。


 物好きかもしれぬがの。

 あ館様に叱られることもあるまい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ