14 渡辺の綱に全部成敗されてしまった?
座ったのは、素敵なカフェでもなく、おいしげな湯気が立ち込める食堂でもなく、酒の香りが充満する居酒屋でもなかった。
「ミリッサは、学生と一緒にはお店に入らない主義だから」
阪急電車の高架下、雨に濡れていないベンチを探して腰を落ち着けた。
ほの暗いがいかがわしくはない。目の前を多くの人が通り過ぎる。
ランは、ウキウキ、さっきコンビニで買ったおにぎりやサンドイッチや飲み物を出してくる。
「お金払う」
「ううん、これは私のお願いだし、自分のものも買ったから」
「でも」
「いいの!」
「こんなものまで」
「へへ」
みたらし団子や牡丹餅や黒蜜のわらびもち、などなどが袋から顔を覗かせている。
「なんだよ、これ」
「言わずと知れたイカクン」
なかば押し付けられるようにして口にした卵サンド。
たいして美味くも感じなかったが、それでも一息ついた。
さあ、今日の行き先と、待っているという人のことを聞こう。
が、その前に、とランはここでガリの話を反芻した。
男を弄ぶか~~。
やだよね~、人間の社会って、と嘆息してみせたのだった。
しかしすぐ、
「妖怪は信じるって話、そこから話します」
と、たちまちモードを切り替えた。
うむ。
どこからでもいい。
「昔々、大昔、京に都があった時代、妖怪は普通にそこらじゅうに見られた。人々は恐れおののき、陰陽師は商売繁盛」
などと、わけのわからない前振り。
「でも、その妖怪どもはどこに行った? 渡辺の綱に全部成敗されてしまった?」
「さあな」
「そんなわけないよね。ミリッサは授業でこう言った。現代人には見えなくなっただけ」
「ああ」
「じゃ、妖怪はいるってことよね」
おいおい。
この話はどこへ行く。
「やっぱり、そこら中に。例えば、今、ミリッサのすぐ前に」
「だろうな」
「で、ミリッサは平安人のように、妖怪が怖い?」
「そりゃ、相手によるだろ」
「だよね。妖怪イコール悪で、怖い、ということじゃない。実際、ミリッサは私を怖がったりしていない」
「……」
ん?
んん?
なんだ?
なんて言った?




