エピローグ
映画館の静かな光の中で目を覚ました蓮は、ゆっくりと深呼吸をした。目の前にはスクリーンに流れるエンドロール――天音と父親、そして自分たちの夏の思い出が映し出されている。
外からは、夏祭りの夜の余韻として、遠くで花火の音が聞こえ、夜空に揺れる光がスクリーンの窓をかすかに照らしていた。
あの日、蓮は確かに夏祭りの夜に告白し、胸の奥の後悔と痛みをぶつけた。天音は優しく抱きしめ、もう苦しまなくていいと、すべてを許してくれた。その温もりは、現実の時間を超えて今も蓮の胸に残っていた。
窓の外、夜空に咲く花火の光が、あの夜の二人の笑顔をそっと照らしているようだった。
静かに後ろを見ると、オーナーが少し微笑みながら座っていた。頑固で無口な彼が、蓮と天音の時間をそっと見守ってくれていたことを思い出す。蓮は心の中で小さく頭を下げた。
「ありがとう……」
数日後、蓮は天音の父親に会い、あの夜の感情的になった自分を謝った。
「親父さん……あの時は、感情に任せてしまってすみませんでした。天音のことを思うと、つい……」
父親は静かに頷き、優しい笑みを浮かべた。
「いいんだよ、蓮。天音も、君の気持ちを知って喜んでいると思う」
その言葉に、蓮は胸の奥にあった重さが少しずつ溶けていくのを感じた。涙はまだ少し残っていたが、もはや悲しみではなく、感謝と前向きな温もりに変わっていた。
外に出ると、夏の夜風が肌を撫で、街の灯りが静かに揺れる。遠くで花火が弾け、夜空を彩る光と音が、夏祭りの思い出をそっと蘇らせた。蓮は深呼吸をし、ゆっくりと歩き出した――天音の温もりと共に、生きる道を選んだ自分を感じながら。
夏は過ぎても、あの夜の光と声、そして花火の輝きは、確かに胸の中で生き続ける。
そして、前に進む一歩一歩が、天音と過ごした夏の奇跡を、未来へと繋いでいく。




