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調書

 狭い駆逐艦に代わり、海賊をはじめとする生存者を収容した戦艦メリオス。

 海賊と商船の生存者たちを個別に収容し、衛生兵が治療を施している。

「やはりキッドの残党か」

 ガロンから受け取った海賊の調書を読み、エルは呟く。

 かつて世界の海を騒がせた伝説の海賊キッド。

 雷雨や嵐などの悪天候をものともせず、船団を率いて交易船はもちろん軍船も標的に襲い掛かる様子から海の死神と怖れられていた。

「それと、商船ですが少し奇妙なことが分かりました」

 もう一枚の調書を提督に見せる。

「ガンダル王国、セントリオ商会所属…」

 調書に記された文章を読み上げる。

「聞いたことのない国だ」

「それもそのはずです。そんな国は存在しないのですから」

「妙な話だな。所属する国を偽る必要などないはずだ。

 ましてや存在しない国など…」

 地政学に詳しいガロンの言葉に、疑念を募らせるエル。

「商船の中身を調べさせろ。

 備品や積み荷、メモ書きの一つさえ見落とすな」

「承知しました。その前に、船長に事実確認を行います」

「わかった、手短に行え」

 提督から下された船内の調査指示に、ガロンは踵を返して船長の元に向かう。

「副提督のガロンです、貴方の船の調査を行いたい」

 恰幅の良い船長に調査の協力を要請する。

「ち、調査ですか?それはどうして?」

「貴方の話に不審な点があったためです。

 まず、貴方の所属するというガンダル王国は我々は知りません。

 こちらの海図をご覧いただけますか?」

 船長であるサクルティスの前に、世界地図を広げる。

「な、何だこの地図は…!」

「世界を記した地図です。

 そしてこちらが今いる海域です」

 地図に下半分、南半球にあるウルスラ海を指さす。

「貴方が本当にガンダル王国から来たというのであれば、その位置を指し示していただきたい」

 動揺する船長に対して淡々と指図するガロン中将。

「そ、それは…できません。

 そもそも、私の知っている海図と違いすぎます」

「そうですか、では、調べさせていただきます」

「そ、それだけは」

「ご心配なく、商品に傷をつけないように最大限配慮いたします。

 それとも、何か都合の悪い代物…失礼ながら、密輸品でも運ばれているのですか?」

「そ、そのようなことは…」

「では、問題ありませんね?

 それではこれに同意をお願いします」

 同意書にサインを求めるガロン。

「えっと、貴国の文字で書けばよろしいですか?」

「ガンダル王国のもので問題ありません」

「そうですか…」

 どこか観念した様子でサインを記すサクルティス。

 見たことのない文字ではあるが、何と書いてあるのかは同国出身の他の船員に確認を取れば問題ない。

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