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大艦巨砲主義の海軍女帝  作者: 影光
1章 海軍大将エル・ゼナ
2/17

教練

「目標、10km先の駆逐艦!主砲、撃ち方はじめ!」

 雷鳴のような轟音が大海原に響き渡る。

 メリオスと呼ばれる220メートル級の戦艦から放たれた、36cmの砲弾の群れはマッハ2を超えて飛翔し、標的の駆逐艦に襲い掛かる。

「弾着、今!」

 駆逐艦を挟むように立ち昇る8本の水柱。

「次弾装填」

 専用の装置によって数百キロになる砲弾が装填され、炸薬の詰まった缶が砲に入れられる。

「仰角修正!4!」

 砲撃の指揮を執る砲術長が先ほどの着弾位置を基に主砲である45口径36センチ砲の仰角を修正、再度発射態勢に入る。

「撃て!」

 再び響く砲声。

 精度の増した砲撃は駆逐艦を捉え、弾着する。

「命中!目標破壊!撃ち方やめ!」

 1発の命中弾によって遠方で燃え盛る駆逐艦を双眼鏡で眺めながら、艦長であるカレンが砲撃の停止を指示。

 砲術長であるローレンが近くに置いてあるボードを手に取り、今回の結果を記録する。

「今回の教練は以上になります、いかがでしたか?閣下?」

「砲撃に無駄が多い、せめて命中精度を高くしろ。

 訓練であの標的相手ならば、妾なら2発に1発は当てられる」

 ローレンに対して不満を漏らしながら、赤い目で今回の教練のデータを見るエル・ゼナ大将。

 戦艦隊の司令官を務める彼女からしてみれば、今回の教練の結果は納得のできるものではないらしい。

「25%だ。訓練において、その上で静目標相手ならばせめて命中率を25%にしろ」

「命中率25%…ですか?」

 大将からの要求に困惑するカレンとローレン。

 カレンも新任艦長として腕の立つ砲術長を据えたはずなのだが、それでも司令官の期待に添えられなかった。

「実戦における艦砲の命中率は訓練の5分の1になる。

 今のままでは実戦においては役立たずだ。

 ローレン、貴様は戦艦の砲術長は初めてだったな?

 なら妾が手本を見せてやる」

 カレンとローレンに窓の外を見るように顎で促すエル。

 促されるままに大型双眼鏡を覗くと、そこには海洋竜と呼ばれる30メートルほどの大きな白い体色のモンスターが日光浴をしていた。

 シーラゲーテとも呼ばれるモンスターで、体当たりや噛みつきによる攻撃で貿易船をはじめとする大型船舶を容易く破壊するため、危険生物として船乗りたちの間で恐れられている。

「第一主砲、方位右28度、仰角12度、弾種、榴弾」

 後ろに束ねた黒髪を揺らしながら、伝声管を通して第一主砲に下命すると、ゴゴゴと大きな重低音を奏でて砲塔が動き出す。

「発射用意!撃て!」

 轟音とともに撃ち出される2発の砲弾。

 音速を超えて放たれた榴弾のうち1発が、あくびをしていた海洋竜に着弾する。

 爆風がモンスターの体を砕き、真っ赤な火焔が肉片を灼く。

「初弾命中…」

 エル提督の射撃指揮に愕然とする2人。

 巡洋艦の砲術長としてキャリアを積んでいたローレンではあるが、2発のみ撃って遠くの敵に命中させたことは無い。

「いいか、戦場において最後に頼りになるのは己の感覚だ。

 実戦を何度も経験して感覚を研ぎ澄ませ続けろ」

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