未知への遭遇
「はぁ!?エルフの王女だぁ?」
カンナを収容して1時間後。
彼女への尋問を終えた士官からの報告にラミアが叫ぶ。
「何度も確認したのですが、同じことを繰り返すばかりで…」
「エルフって、おとぎ話じゃあるまいし…」
額に手を当てながら呆れるラミアをよそに、尋問室から出たカンナが士官に連れられてラミアの横に立つ。
商船から拉致した時とは違って顔は拭かれ、ボロかった衣服は商船から略奪した服に着替えている。
「おい、カンナと言ったか?
エルフの王女か何だか知らねぇがここのボスはアタシだ。
仮にあんたの言ったことが真実だとしてもそれだけは揺るがねぇからな?」
キッとにらみつけるラミアをよそに、カンナは用意された部屋へと案内されてゆく。
「艦長、どうしますか?一応、人質にはなりそうですが…」
「訳わからんからさっさと食料と交換したいな」
捕まえた民間人や宝飾品をブローカーを通して食料や消耗品と交換する、セイレーンの方針。
普段は十分な量を蓄えてから交換に応じるのだが、エルフの王女を自称する女に辟易する。
「それと、もう一つ妙な事を言っていました」
「まだあるのか…さっさと言え」
「どこから来たのかを聞いたところ、ガンダル王国と」
「聞いたことのない国だ。
そういえば、商船から略奪したものの中に海図があったな、持ってこい」
「直ちに」
5分ほどして士官が地図を持ってくる。
『セイバスト海』と書かれた羊皮紙の地図。
そこにはカンナの話したガンダル王国をはじめとする、未知の国家の名前が記されている。
「偽物にしちゃ精巧すぎる。
いや、そもそも海図を偽造する必要すらないか」
「本物という事ですか?」
「その確率は高い、だとしたらなぜ今まで発見されなかった?」
「向かいますか?」
「そうしよう、未知の国なら海軍も追ってこれないだろう」
ラミアの一声でセイレーンはガンダルへ向けて舵を切る。
未知の国、おとぎ話の中の種族、精巧な架空の地図…
次々に湧いて出る謎を残しながら、セイレーンは深海を進む。




