潜水戦艦セイレーン
30分前、海中300メートル。
20メートルはある海洋モンスター達の群れの中を突き進みながら、一隻の戦艦が深海を堂々と進む。
セイレーンと名付けられた巨大艦の全長は200メートルを超え、横幅は最大で40メートル。
魚雷をはじめ、要塞攻撃を想定した大口径砲などが備えられている。
「艦長」
セイレーンに設けられた艦長室。
世界地図や高価な美術品に宝飾品が置かれた部屋に、眼鏡をかけた男性の士官が入る。
「なんだ?」
拭いていた宝石を机に置き、女艦長であるアミラが要件を尋ねる。
「艦の食糧が減ってきています。
どこかで調達する必要があります」
「はいはい」
面倒そうに席を立つと、近くの伝声管の蓋を開く。
「こちらラミア、ソナーに船舶の反応はあるか?」
≪前方1kmに船団らしき反応があります。
すくなくともランデル国の軍艦ではありません≫
「了解、潜望鏡深度まで浮上、目視で確認しろ。
各員は戦闘に備えろ」
≪了解!≫
ラミアの指示に一気に浮上。
10メートルほどまでの深度に達すると、潜望鏡を伸ばして船団の正体を確かめる。
≪船団は商船らしき、数は5隻、シンボルは…クジラの模様、どこの所属かは分かりません≫
「十分だ、襲撃用意!」
壁に掛けていた直剣を手に取り、部下に襲撃を指示。
海上まで浮上すると、船団の針路上の海面に副砲である20・3㎝砲を撃ち込む。
≪弾着、敵船団停止!≫
「機関全速前進、切り込み戦闘備え!」
まるで海賊船のような雰囲気のセイレーン。
艦長直々に隊長を務める切込み部隊が艦首に立ち、砲兵が両舷の甲板に格納されていた120㎜単装砲を用意する。
「威嚇射撃用意、撃て!」
長い赤髪を海風に靡かせながら下命。
甲板砲を船団に当たらないギリギリの海面を撃ち、船員を恐喝する。
「船団に告ぐ、1隻の船と船員1人を30分以内にこちらに明け渡せ、さもなくば皆殺しだ」
慣れた様子で要求を告げるラミア。
対する船員は皆が青ざめた表情をしている。
「何を黙り込んでいる!?
皆殺しにして全部の船を奪ってやってもいいんだぞ!?」
剣を引き抜き、船員に威嚇する。
「わ、分かった、船と女をやる、だから命だけは助けてくれ」
「ならさっさと、退船しな、残り20分だ」
どたどたと足音を立てながら船員が僚船に退避。
斬り込み部隊が商船に降り立つと、船内に残された一人の女性の身柄を確保する。
「海賊…下劣な…」
ラミアたちをにらみつける女性ことカンナ。
「お前、船員じゃないな?娼婦か?
まあいい、人質にはなる」
カンナの身柄をセイレーンに移送すると、逃げる船団をよそに積み込まれていた物資を略奪する。
食料品を優先し、宝飾品や航海用の道具、果ては掃除道具まで使えそうなものは片っ端に奪い取る。
「なんか、古臭いものばかりだな」
羊皮紙やランタン、コンパスなどの航海道具が自分たちのものよりも遥かに古い年代の物であることに疑問を抱くラミア。
「まあいい、焼け」
退船後、痕跡を消すために艦に積まれていた焼夷弾を商船に撃ち込み、船を焼く。
黒煙を上げて燃え盛る中、セイレーンは再び深海に姿を隠してゆく。




