奇妙な積み荷
交易船が港を発って3日、追い風が交易船を加速する中、船長が険しい顔をしながら書類をにらむ。
「やはりおかしい」
ポツリと声を出す船長。
そこには食料の管理記録が記されている
「食料の減り方ががいつもよりもわずかに早い、ネズミが湧いている可能性があるな」
「ネズミ…ですか」
船長の言葉に不安になる副官。
長期間の航海において食料は重要であり、ネズミなどによる食害は食糧不足による飢餓や栄養不足による疫病の流行を招く。
「すぐに対処しろ、繁殖でもされたら致命傷だ」
「直ちに!」
船長の命令に即座に行動を開始する副官。
応急の対策として、各所にネズミ捕りのトラップを仕掛ける運びとなる。
交易船の暗い貨物室。
交易品を入れた無数の木箱が手められた部屋に、一人の船員がネズミ捕り用の毒餌を片手に入る。
(このあたりでいいかな?)
しゃがんで毒餌を置こうとしたとき、木箱の1つが俄かに音を立てて揺れる。
「なんだ!?」
積み荷が立てた音にとっさに身構える船員。
恐る恐る近づくと、複数ある木箱のうちの1つの蓋がわずかにズレていることに気が付く。
不審に思い両手で蓋を開けると、中にはフードを被った女の姿。
「誰だ!」
船員が叫ぶと、近くにいた船員が何事かと集まってくる。
「侵入者だ、捕まえてくれ」
抵抗する侵入者を力づくで箱から引き摺りだしてフードを脱がせる。
「エルフ女!」
長い耳に船員の一人がそう叫ぶ。
「船長に伝えて来い、エルフ女の密航者だ!」
屈強な船員がエルフ女ことカンナを拘束する中、船長室へ事の仔細を伝えると、船長を伴って戻ってくる。
「ほお、これはなかなか大きなネズミだ」
「食料泥棒の犯人はお前だったか」と言いながら、カンナの顔をまじまじと観察する。
「粗末な衣服にしては顔立ちがよい、良家の令嬢あたりか?
顔に傷があるようだが…治療すれば高く売れそうだな」
「っ!」
棚から牡丹餅と言わんばかりにカンナを値踏みする船長。
そんな様子に強い嫌悪感を覚えていると、彼女が掛けている首飾りに気が付く。
「その首飾り、王族か」
思わぬお宝に船長が口元を歪めた直後、船が大きな衝撃に襲われる。
爆発音と共に船が振動し、積み荷をはじめとする貨物類が音を立てて床に落ちる。
船員は全員が転倒し、立ち上がると何事かと甲板に飛び出す。
「なんだ、モンスターの襲撃か!?」
望遠鏡で原因を探ると、遠くに巨大な影。
交易船の何倍もの体躯を誇る巨大な影がこちらに迫っていることに、船員たちはカンナそっちのけで戦慄いた。




