セントリオ商会
王国北部にある港町、モリアス。
海には交易用の帆船が行き交い、白いカモメが空を飛んでいる。
「―――これで、いかがでしょうか?」
石造りの商会の一室。
商会長である恰幅の良い男が、大きな数字を示した線そろばんを目の前の取引相手に置く。
「もう少し、色を付けてはいただけませんか?
何分、今回の「仕入れ」にはかなりのコストを掛けましたもので」
「仕方ありませんなぁ、今回の戦役で当方もたくさん稼がせていただきましたし、そうですね…貸し付けた資金の返済を半分免除する、というのはどうでしょうか?」
「それなら良い報告ができそうです」
商会長の示した案に、王国の文官は納得して合意する。
「それにしてもエルフの王族を売っていただけるとは、光栄でございます」
「こちらといたしましても商会には戦費をたくさん出していただけましたし、何より海運の力を貸していただけたことは感謝の極みです」
戦争への協力に謝意を示す文官。
彼が今いるセントリオ商会は海運による大陸間の貿易に力を入れており、交易船として保有するガレー船は馬車よりも遥かに優れた輸送力を持つ。
今回の戦役では港町を中心に侵攻することで兵站を確保しつつ、かつ艦に積載された魔導砲という強力な兵器による支援攻撃で戦争を有利に進めることができた。
「して、次はどこを攻めるおつもりですかな?」
さらなる儲け話に期待する商会長。
「あいにく、次の侵攻先はまだ決まっておりません。
ただ、王国の北方に生息するドラゴンを討つという話なら聞いております」
「北方…ですか」
「彼の地は魔鉱石が多く含まれる場所。
ドラゴンを討伐して多くの魔石を確保する予定なのでしょう。
あわよくば捕獲して使役することも考えているとか…」
「そうでございますか、しかしドラゴンを使役とは、豪胆なことを…」
悠久の時を生き、一軍を一息で蹴散らすほどの力を持つと怖れられるドラゴン種。
それを討伐、あるいは捕獲して使役するという恐れ知らずの王国にわずかながらの畏怖と期待感が湧いた。




