灰色の街
フォセストリア大陸南部、レイリア王国、首都サンディア。
国民たちの暮らしていた木造の美しい町並みは戦火によって廃墟と化し、転がっている亡骸には無数のカラスがたむろしている。
「……」
王城のバルコニー。
かつてはエルフの王が国民たちの生活を見守ってきた場所に、帯剣した1人の若年の武官が静かに立っていた。
髪は青く、束ねた後ろ髪が夕焼けの風に靡く。
「こちらにおられましたか、アルス様」
板金鎧の士官がアルスと呼んだ男に駆け寄り、現在の様子を報告する。
「首都の制圧はすべて完了いたしました、隠し通路を使って逃げた王族共も、王を含めた5名を捕らえました。
残りは現在捜索中です」
「わかった。カレッサ将軍に報告する。
だが油断はするな、残党やモンスターが都市を攻撃しに来る可能性もある。
夜襲に備えて警戒体制を敷け」
「承知しました」
アルスの命に応えて下がる士官。
やがて日が落ち、都市の各所に明かりが灯る。
魔石と呼ばれる鉱物を使って焚かれる魔法灯の光が廃墟となった王都サンディアを照らし、夜襲に備えた兵士が得物を煌めかせる。
「・・・・?」
戦斧を背負った兵士が空を見上げ、首をかしげる。
「どうした?」
「いや、月の形、なんかおかしくないか?昨日は三日月だったのに、今日は半分になってやがる」
王都を見下ろす上弦の月。
たった1日での不自然な変化に気味の悪さを覚える。
「一応、アルス様に報告しとくか?」
「いや、戦とは関係ないだろうし、やめておこう。
それよりも、エルフ共やモンスターの襲撃に気を付けないと」
気を引き締め、夜襲を警戒しながら兵士達は街を巡回する。
宵闇がより濃さを増してゆく午前2時、遠くから狼の遠吠えが響いてくる。
「来たぞ」
「アルス様に報告しろ!」
休息していた兵士たちが槍を取って立ち上がる。
壊れた関門に向かえば、遠くから黒い体色の狼の群れが見えてくる。
数は10頭、暗がり狼と呼ばれる2、3メートルのモンスター。
「戦闘用意」
駆け付けたアルスが部下に指示を出す。
槍兵が槍を構え、弓兵がその後ろから狼の群れに矢を放つ。
城壁の上に配備されたバリスタを稼働させて、群れのリーダーらしき狼を射抜く。




