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ケートスの最期

 ペガサスのハルペー光線はケートスの手足を破壊し身動きが取れないようにした。

《機体を捨てて降伏しろ》

《いやよ!》

 そう言うもののアンドラはあきらめかけていた。ここまでがんばってきたものの、やはり正規の軍人には勝てなかった。

「あ……」

 ふとアンドラの脳裏にある記憶が蘇った。確かソールがケートスにある仕掛けをしていたのだ。

(この機体、旧式だから戦いの途中で動かなくなるかもしれないな。もしものときを考えて最終手段として自爆装置を付けておこう。本当に追い詰められたときに使えよ。起動させたらすぐに機体から離れろ)

 あのときは敵機接近の警報が鳴ったため、最後まで説明を聞けなかった。

 追い詰められたときに使え、すぐに機体から離れろ……。

(よし!)


 急に動かなくなったケートスを見てペルセウスは不審に思った。

「どうした? ついに観念したか? それなら……」

 ペルセウスはペガサスをケートスに向けて突進させた。至近距離から光線を浴びせるのだ。だがコックピットだけは的を外し、パイロットのアンドラを助けるつもりだった。

(僕らのせいで貧困が広がっている…か)

 聞いてやろうと思ったのだ。それが事実なら自分たちにも非があるのかも知れない。

「お願い、ケートス! 力を貸して!」

 アンドラはソールに教えられたボタンを押した。するとケートスの胴体の後ろがふくれあがり、八方に広範囲の光を発した。

「!?」

 ペルセウスはとっさに操縦桿をひねった。さすがにトップガン、と言いたいところだったがペガサスの左翼が光線で折られた。

「しまった……!!」

 バランスを失ったペガサスは頭から浅瀬に落ちていった。


「いてて……僕としたことが不覚をとるとは」

 ペガサスから這い出たペルセウスは、たった今、自分を撃墜した相手に目をやった。

「こ、こんな状態で僕と戦っていたのか……」

 ケートスのボティは装甲がボロボロに剥がれている。ペガサスが手足を吹き飛ばす前から、すでにまともに戦える状態ではなかったのだ。

 ペルセウスはコックピットまで走った。

 力ずくで開けるとそこにいたのは気を失った1人の女性だった。自分と歳は変わらない頃だろうか。

 さらに驚いたことにその女性の体にはいくつもの配線コードが巻き付いていた。先程の光を放ったときに機体が暴走して壊れたのだろう。その反動で配線が巻き付いたのだ。

「おい、しっかりしろ!」

「う……」

 その女性――アンドラは目を覚ました。

「生きているな、少し待っていろ」

「助けるの? 私を……」

「敵と言えどなるべくなら殺したくはない。それに、さっき君が言ったことも気になるからな、聞かせてもらうまで死なせるわけにはいかない」

 ペルセウスは長めのナイフを取り出し、アンドラの体に巻き付いた鎖のような配線を断ち切っていく。

「いけない、早く逃げて。ソールが言っていたわ、あの光を放った後、すぐに機体から離れてって!」

「は?」

 そう言えばこげくさい。しかも動力部とみられる機体後方からは怪しげな白い煙が出ている。詳しい構造を知らなくとも、非常に危険な状態だというのは直感で分かった。

「あの男は……穏やかそうにしているくせにいつもやっかいなものを作ってくれる」

 真摯な表情だったペルセウスが引きつった笑みを浮かべた。機敏に配線を切りアンドラを抱えてケートスから降りると、ペガサスに向かって駆けだした。

「あいつはあの機体に光線を放つ自爆装置を仕掛けたんだな。動力部を暴走させて光線を発射する。だけどそれに機体は耐えられない」

 アンドラを抱えたまま、ペガサスのコックピットに乗り込んだ。次の瞬間――ケートスは光を放ってドンッ、と爆発した。

 途上国の苦しみを訴えるため、つぎはぎの部品で開発された兵器はその使命を果たしきったのだ。

「結果として、僕はあいつに負けたのか……」

 ボソリと呟くペルセウス。

「あのう……」

 アンドラが顔を赤らめて言った。ペガサスは1人乗りのため2人で乗ると密着してしまうのだ。

「あ、すまない。そう言えば名前を聞いていなかったね。僕はペルセウス。君は?」

「私はアンドラ。みんなには呼びやすい愛称を教えているけど、本当の名前はアンドロメダって言うの」


 2人の戦いと邂逅、そして使われた兵器は、のちに「ペルセウスのアンドロメダ救出劇」として、神話で語り継がれていくことになる。


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