七の世界 秘密と新たな謎
買い物に行った後、シェフィが夕食を作ってくれた。
本当に手際が良くて、味も良い。
「シェフィ、聞きたい事がある」
「なに?プシェが聞きたい事ならなんでも答えるよ」
「……」
聞きたい事は多い。何から聞くべきか。
一の世界を知っているのか。そんな事をはじめに聞く事は流石にできないな。
まずは、こっちの事で気になる事を聞こう。
「シェフィは貴族なのに何故家に使用人がいなかった」
直球すぎる気もするが、誤魔化されないためにも直球に質問するしかない。
それでもはぐらかされる可能性はなくはないが。
「昔はいたんだけど、みんな辞めちゃって」
「辞めたなら雇えば良いだろう」
「面倒だなって。僕以外いないから」
シェフィはにこやかにそう答えた。
嘘なのか本当なのか分からない。シェフィの事だ。真意を確かめようにも誤魔化されるだろう。
一の世界の事を言わずにそれに近い事も聞いてみるか。もし知っていたとしてもそれははぐらかす可能性が高いからな。
その反応を見ればこれが嘘か本当か分かるかもしれない。
「……シェフィはこんな話を知っているか?鏡の中にはもう一つの世界があるという話だ」
「へぇ、そんな話があるんだ。面白そうだね。本当にあるなら行ってみたいよ」
本当にそう思っているのか?
もっと直球に行ってみるか。
「もし、この世界に似た世界があるといえば信じるか?」
「どうだろう。プシェが言うんだったら信じるかな」
本当に知らないだけなのか?
「……プシェは僕になに聞きたいの?」
「……」
「僕誰にも言わないよ。だから話して?」
言う言わないの問題ではない。
それを知ってしまえば普段の生活ができなくなるかもしれない。
「なに言っても大丈夫だよ。多分、君が言いたい事を聞いてもなにも変わらないから」
これは、分かっているな。
「この世界と似たもう一つの世界がある」
「うん」
「こっちが朝なら向こうは夜というように半日時間はずれているが、私がしる限り地名とかは同じだった」
「うん」
「驚かないんだな」
シェフィは驚く事はせず冷静に話を聞いている。こんな突拍子のない話、信じていないという感じでもない。
そう、これはまるで初めから全て知っているかのような反応だ。
「……それで、私はその両方の世界を行き来できるんだ」
「うん」
「なにも言わないのか?こんな信じられないような話」
「反応する事といえば間違えを指摘させてもらうくらいかな。正確には半日と十分だよ」
「細か⁉︎というかやっぱり知っていたんだな」
「うん。この際だから言わせてもらうけど、向こうの婚約者も知ってるよ」
なんでそんな事を知っているんだ。
「僕、こっちの世界の人との交流は君以外ないけど向こうの王子様とは交流があるんだ。向こうの王国の宰相の事を調べてみると良いよ。そうすれば少しは君の知りたい事を知れると思うよ」
だから終始笑顔を崩さず、一切驚く事もしなかったんだな。
だが、あの伝承だと世界を渡る事ができるのは銀の姫と呼ばれる存在だけなのではないのか?