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十五の世界 懐かしの人

 学園の帰り、シェフィとジシェンと一緒に帰っていると声をかけられた。


 見たところ二十代くらいの男性。その顔はどこか見覚えのある顔だ。


 どこだっただろうか。忘れてはいけないような事だった気がするのだが思い出せない。


「プシェ、ようやく会えたよ。ボクの宝物」

「誰ですか?」

「ボクの事は覚えていないだろうね。でも、それでも良いんだ。一眼見れただけで。一つだけ答えてくれるだけで」


 男性は涙を流している。


「プシェ、今は楽しいかい?」

「……楽しいと思う」

「そうか。ありがとう。そこの二人も。これからもどうか我が娘をよろしく頼むよ」


 娘?それに、このどこか懐かしく感じる姿。


 それはもしかして、いや、もしかしてなんかじゃない。確実にそうだと言い切って良いだろう。


「はい」

「はい」

「プシェ、どうか幸せになって」


 会って話した記憶がない父親になんて言えば良いのか分からない。だが、もし今ここで黙ったまま別れれば後悔するような気がする。


「……プシェは歴史が苦手何だよね。いつも赤点ギリギリになっている。それに数学も得意じゃない。僕がいつも教えてる」

「裁縫は得意だ!」


 急になんでこんな事を言うんだ。普段のシェフィなら人前でこんな事を言わないのに。


「ふふ、そうか。確かに歴史は難しいよな。それに数学は答えを求める過程がボクも苦手だった」

「料理も簡単なものしか作れないよ。だから、最近は僕が作ってあげているんだ。ちゃんと栄養も考えて作っているから安心して良いよ」

「料理くらい私だって……」


 急にこんな話題出されて気付くのが遅れた。シェフィは私が父様と話せるように気を使ってくれたのだな。


 方法はちょっとあれなのだが。


「プシェ、女の子だから料理をとかは言わないけど、自分で作る方が安く済むよとだけは言っても良いかな?」

「自分で作れるんだが」

「作れるなら良いよ。それに、シェフィルくんが作ってくれているから良いのかな」


 シェフィが作ると時々豪華すぎるんだが、それは黙っておこう。


「そろそろ行かないと。ごめんね、知りたい事を教えてあげられなくて。でも、これだけは言えるよ。今も昔もこれからもずっと愛してる」

「私は父様と一緒にいた記憶がないからなんとも言えない。だが、今日話して母様が父様を選んでくれて良かったと思っている」

「プシェはしっかりしている。ボクが心配する必要なんてなかったのかもしれないね。さようなら、ボクの宝物」

「さようなら、私の自慢の父様」


 別れの挨拶をすると当様はぼんやりとした光の中に消えていった。

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