十の世界 同棲
「プシェ、夕食できたよ」
「ああ。わざわざ済まないな」
「住ませて貰ってるんだからこのくらいはするよ」
「このくらいとは?」
料亭にでもきたかのような豪華な食事の事を言っているのか?
何か良い事でもあって気合が入っていたのか知らないが、これはもう料亭レベルだ。
「二人なのにちょっと多過ぎちゃったかな?」
「それだけか?」
「うん」
なんだそのほかに何かあるのと言わんばかりのきょとん顔は。
「豪華すぎるだろう!」
「えー、そうかな?普通だと思うけど?」
「普段家に来た時よりも明らかに豪華なのだが?」
「そうかな?でも、豪華でも良くない?」
「良いには良いんだが」
ここまで豪華にされると作らせてしまって悪いなと思ってしまう。
まあ、本人が作りたかったのならそれで良いのか。
「プシェ、明日は向こうに行くの?」
「学園があるからな。だが、終わればすぐに帰ってくる」
「うん。待ってる」
もはや子犬にしか見えなくなってくるな。
「明日、向こうの学園テストなんでしょ?勉強教えてようか?赤点補習にならない程度にでも」
「そのくらいは勉強できる」
「でも、プシェって歴史とか苦手じゃ」
「流石に赤点になるレベルではない」
補習になれば休みが無くなるからな。そうならないように対策はしてある。
「そっか。頑張ってね。明日のお弁当は豪華にしておくから」
「程々にしてくれ」
「冗談だよ。でも、応援しているって分かるようなお弁当にしたいなぁ」
「そのくらいなら良いが」
二人で生活していると退屈しないな。相手がシェフィだからか安心感しかない。
「そういえば、最近物騒だから気をつけておいた方が良いね」
「私は夜はいないんだから気をつけるのはシェフィじゃないのか?見た目が見た目だから目をつけられるかもしれない」
最近この辺りで女性が襲われるという事件が多発している。シェフィは見た目で勘違いされそうだから心配だな。
「大丈夫だよ。僕、これでも騎士科でいっぱい勉強してるんだから。何かあった時の身の守り方くらい知ってるよ」
「頼もしいな。なら、この家の貴重品を私がいない間守ってくれ」
「任せて。プシェの大事なものは絶対に奪わせないから」
意気込む姿まで可愛いとは、本当に男なのか?
勘違いはされそうだが、騎士科で成績トップなんだ。何かあっても大丈夫だろう。
「もしプシェの家に入ってきたら、二度と外を歩けないようにしておかないと」
……むしろ心配すべきは相手の方か。
「あまりやりすぎるな」
「大丈夫だよ。バレないようにやるから」
そういう問題ではないのだが。
家を空けるのが不安になるな。だが、明日は進学が決まるテストだからな。行かないわけないはいかない。