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名探偵は異世界にも  作者: っぽ
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第1話 ポラン・ロックシャー 名探偵を志す

初めて小説家になろうに投稿します。 もし面白いと思ったらいいねと星をお願いします。

『探偵には相棒がいなきゃ!』


『探偵は常にスマートな人間なのさ!』


『探偵が名探偵になるには柔軟にね』


 そのようなセリフが頭の中に巡りまわっていた。


「随分と気に入ったみたいだな。俺はそこまでだったけど……」


 話しかけてきたのは俺の親友で、俺をこのような素晴らしい映画を見ようと、俺を誘ってくれた。これまでこいつと親友でいて良かったと思うことは何度かあったが、今回俺をこの映画に引き合わせてくれたことで、よりいっそうそのことを理解させてくれた。


「何言いてるんだよ? あれを見て探偵を目指さない奴なんているのか?」


「いや、ならないよ。しかも、なんでこんなB級映画で?」


「いや〜俺初めて探偵なんてもの知ったからな」


 そう俺は初めて探偵というものを知ったのだ。


「まあ、俺たちの島には娯楽が少ないからな」


 そう言って親友は息を吐いた。


 俺たちが住んでいるのは人口が1000人にも満たない島で、今日映画見るために4、5時間かけてきたのだ。そもそもうちの島は外部との交流が少なく、定期船が1日に1回くる程度、それぐらい田舎、ど田舎なのだ。

 そんなど田舎から俺は映画を見にきたのだが、最初はめんどくさくて乗り気じゃなかった。










「映画〜?」


「そう、定期戦のおっちゃんから映画のチケット貰ったんだ」


「でもそれ見るために何時間かけるのはな〜」


「もう夏休みの宿題終わったんだろ? 何にもすることないからな」


「まあ〜そうなんだけど〜金ない」


「金なら大丈夫だ。定期戦のおっちゃんが定期戦の分は無料にしてくれるって時間も俺たちに合わせてくれるって」


「う〜ん、でもな〜」


 ぶっちゃけめんどくさい。


 めんどくさいけど暇なのは確かだ。


 でも実際に行くとなったら丸一日潰れるのが目にみえる。そんな2、3時間のためにそこまでするのははっきりいいてしんどい。


 それなら川で釣りとか、テレビとか見ていた方がいいと思う。


 断る……か……そう決めて俺が断りを入れようとしたが、


「この映画は探偵ものらしいよ。なんでもミステリー、アクション、ホラー、恋愛、あらゆるジャンルを融合させたらしい新感覚探偵物語らしい」


 …………探偵?


「なんでも社運をかけた大作なんだとか……って聞いてんのか?」


「探偵って何?」


「「……」」


「探偵って何?」


「聞こえてるよ! まじで知らないの?」


「知ってるんだったら聞いてない」


「マジか⁉︎」


「オレんち、スマホ禁止だからな」


 俺の家はスマホ禁止って言って入るけど実際、どう使うか家族全員わからないし、俺も欲しいと思わないので俺はスマホを持っていない。


 もちろんパソコンなんかも“ちんぷんかんぷん”なのでない。

 うちで一番最新の機械はテレビで唯一それだけが俺たち家族が使える。そのせいで少し(?)世間知らずの節があるのだが。


「それにしても、知らないってやばいだろ……まあいい、それを知りたければこの映画を見ることだな。これでお前も映画を見る理由にもなるだろ」


 どうやら親友は俺の情報収集能力を知っているので《《探偵》》、それを知るには映画を見るほかないようだ。

 そんな親友の計らい……じゃなくてはかりごとに乗ってやることにした。


「しょうがないから、付き合ってやるよ」


「じゃあ決定。明日の7時集合な」










 それが俺達の前日での出来事だった。


「昨日まで散々渋っていたくせに」


「俺もそう思うよ。渋っていた昨日の俺を殴ってやりたいよ! 絶対に見ろ! 世界変わるぞ! そう言いたいね」


「テンション高いな〜」


 俺と親友との映画に対する態度は見た後にまるっきり変わっていた。


 俺は映画を見て感動し、探偵というものが好きになった。


 親友は映画を見て、なんかがっかりしていた。


 あんなに面白かったのになぜ親友はこんなにも不満なのか全然わからなかった。


「だいたい、探偵が超能力使うって少し無理あると思うしさ〜。まだそれだけだったらいいけど今度は宇宙人まで出てくるは、モンスターが出てくるはって探偵じゃないじゃんって思ったよ」


 俺はそのような親友の酷評に反論しようと声を上げた。


「でも、ちゃんと推理していただろ!」


「ほとんどの証拠が長野力で見つけていたけどね」


「……ほら、ヒロインも可愛かったじゃん」


「途中で宇宙人に乗っ取られて、体が縦に真っ二つになって死んだけどな」


「しゅ、主人公もかっこよかったじゃん」


「変にコメディやりすぎていてかっこいいとは思わなかったわ。それにに決め台詞もなんかのコピペみたいでいまいち心に響かないな〜って思ったし」


「お、お前〜! 言っていいことも限度はあるだろ〜! それに俺の1番のお気に入りである主人公の名台詞まで貶すとは……君にはこの良さがわからないとはね」


 怒り任せて俺は声を荒げたが、俺は映画の探偵の言葉を思い出して途中から頭を柔らかくして(?)言葉を選んだ。


「まあ、お前が面白かったんだったらいいんじゃね? 割と脳筋のお前が少しは理性を覚えたようだしw」


 そう言って親友は笑った。


「そろそろ、定期戦の時間だ。帰ろう」


「時間か〜。パンフレットも買いた買ったがそれはまた今度にしよう」


「あんな映画のパンフレットなんかあるのか?」


「あんなっていうな! ちゃんと題名で言えよ『探偵だぜ〜い、俺は!』だろ!」


 そういうと親友は俺を見ながら後ろ歩きしながら、呆れるようにこう言い放った。


「そんな題名だから言いたくねーんだよ! お前ぐらいだよ、それを声に出して言えるのは」


「いいだろ〜いい題名じゃないか! そんなこと言うから最近の子供はとか近所のじいちゃんに言われんだ!」


 俺がそのように怒りながら、そして笑いながら話していた。


 その時だった。


 後ろ向きに歩く親友の方に車が来ていることに気づいたのは。


 親友は気づいてない。


 声を出す前に体が動いていた。










「おい! おい! しっかりしろ! 幸生さちお!」


 親友の声が聞こえる。


 なぜか眠っていたようだった。


「早く! 早く! 救急車を!」


 救急車? 


 その言葉を聞いて俺は目が覚めた……いや目を開けた。


「怪我してるんじゃん。大丈夫か?」


 そう俺が声をかけるが、親友は驚いた顔をして涙を流した。


「俺のことはどうでもいい! お前は自分のことを考えろ!」


 そう怒鳴るように言う親友に疑問を持ちながら俺はあることに気づいた。


 下半身の感覚がない……


 そう気づき、俺は足の方に視線を向けた。

 そこには自動車に潰されていた俺の下半身だった……いや自動車で見えないから俺の下半身は潰れてはないのかもしれない。

 しかし誰が見てもそのような希望的観測ができなかった。


「ああ、思い出したわ。俺、轢かれたんだった」


「そうだ! 俺を庇ってな。今救急車呼んでるから喋んな」


 ……救急車か、初めての救急車がこんなになるとは、しかもど田舎の高校生が自動車事故なんて確率的にスッゲー低いと思うけど。


 それにしても全然痛くない。息切れはするけど、なんだか体がすごく軽い気がする。


 本当に下半身がないかもしれない。


 そんなことを考えていたら親友がこんなことを言い始めた。


「すまない。俺が映画を誘ったばかりに……」


「俺が、俺がぁ!」


「そんなに自分を責めるなよ。それになんか探偵っぽいだろ」


 そう言うと、親友はポカンと口を開いて固まってしまった。


「『探偵は時に大胆に』だろ」


 俺はさっきまで話していた『探偵だぜ〜い、俺は!』の主人公が宇宙人がUFOに無理やり証拠を回収させようとしたところに飛び込んだシーンを思い出しながら言った。


 そう言うと親友は涙を流しながら笑った。


「あれは、探偵関係ないだろ」


「そこまで言うのかよ、それなら俺が怪我治ったら『探偵だぜ〜い、俺は!』のパンフレット奢れよ」


「そうだな、だから……だから! 絶対に生きろよ……」


「ああ、約束だ。 ◯◯◯◯」


 それが俺が持っている小林幸生としての記憶だ。

 









 ポラン・ロックシャー、ロックシャー男爵の次男


 それが今の俺だ。


 この名前はものすごく気に入っている。なんだってこの《《ポラン》》はあの『探偵だぜ〜い、俺は!』の主人公の名前だからだ。俺が前世の記憶を取り戻してからはこれは運命だと信じてやまなかった。

 

 当然最初は困惑し、恐怖を覚え夜しか眠れず一日三食、おやつが喉に入らない日々を送っていた。


 しかし、俺が記憶を取り戻した時のことを考えれば思ったより怖くない、むしろ笑い話にでもなりそうだった。

 

 それは1年前の俺が5歳の時だ。

 

 俺が5歳になったことで領内の村に行くことになった。そこで出会った村長が物凄く訛りがひどい、滑舌が悪いと2点パンチで何言ってるかわからなかった。


 そんな村長に村を紹介されたのだが、何度も説明を聞き返すことになり、そんな時になんとか理解しようと言葉に出した時に偶然《《たんてい》》と言ったことで俺は記憶を取り戻した。それによって俺は、前世と今世の記憶がごっちゃ混ぜになってしまい、頭がパンクして倒れてしまう。


 後日聞いたところその時村長は


「田園で出会うんでない」と言っていたようだ。


 そうやってポラン・ロックシャーは小林幸生の記憶を取り戻した。

 










 ……で今の年齢は6歳、つまり記憶を取り戻してから一年が経ったってことだ。


 ただ、記憶を取り戻したと言ってもあの『探偵だぜ〜い俺は』に関係する記憶しかない。つまり俺の前世の記憶はほとんどが映画を見てそれに感動したこと、自分の名前それだけである。前世の記憶の中に俺の親友が出てきたのだが、悲しいことにいくら頭を捻り出しても名前が思い出せない。


 この一年間思い出すことだけに尽力したわけではなく、色々とこの世界のことについても調べた。


 この世界はテリミスという名前の前世でいう、ファンタジーの世界だ。それこそ20年前まで魔王と人類が戦っていたが、勇者率いるブレイヴァーというパーティが魔王を倒したことによって世界が平和になったらしい。


 そんな時代背景があってか、文明のレベルとしては前世に比べると低い、スマホというより、蒸気機関が最新の技術になっているようなぐらいだ。その代わりに、魔法が発展しており人々の意識は豊かさより強さの方に注視している世界のようだった。


 でもさっき言ったように、勇者が魔王を倒したことによって人々は戦い、戦争よりも日々の暮らし、生活の質の向上を目指すようになっていったらしい。


 そして俺の家、ロックシャー家は魔王との戦いで上げた功績で貴族になった、いわゆる成り上がりの男爵だった。

 その話を聞いた時には、俺にも貴族らしく厳しい教育させられると思いそのことをロックシャー男爵、父さんに率直に聞いたが……


 父さんは困ったようにして、


「う〜ん、今は時代の変換期だから何がいいか父さんにはわからんな〜。でも魔法や剣ができて損することはないと思うよ」


 その夜、父さんが母さんに「なんて答えたらよかったんだ」と聞いており、母さんは質問の答えとして「勉強」と答えていた。どうやら父さんは俺に教えている剣と魔法の練習に不満を持ってこの質問したと思っていたようで物凄く心配していた。


 俺はそれを聞いて、父さんの心配の裏腹に《《ある》》決意をした。


 そう、探偵、名探偵になることを!


 この世界では探偵という職業がない? ならば俺がなればいい!


 この世界、テリミスの探偵といえば、ポラン! 

 

 そう言われるぐらいの名探偵になってやる!


 そう思った、いやそうなる!


 








 そして、俺は深い思考から現実に戻ってきた。


「で、ポランは将来何になりたいの?」


「父さんはなんでも応援するよ」


「僕も兄として弟の将来を応援するよ」


 みんなが皿からシチューを掬うのをやめて俺に視線を集めた。


「俺の将来の夢は〜〜」


「何?」


「騎士かい? それとも魔法使い?」


「ぼ、冒険者は⁉︎」


 焦らす俺にみんなが抑えきれず、思い思いに喋り始める。


「みんなが憧れるであろう〜〜」


「「「憧れるであろう〜〜」」」


 そして俺は腕をあげ人差し指を天井に向けてこう言った。


「名探偵!」


 俺は一際大きな声をいい、斜め上を見た。


 ……決まった。



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