だるまさんがころんだ
拝み屋。
僕の祖母がそうだ。
信じる人からは信頼され頼りにされ、同時に恐れられている。
そんな祖母に関して、僕が父から聞いた話がある。
父の姉、僕の叔母に当たる人が高校生の時、ある男からストーカー行為を受けていた。
本人も含めて家族でなんとかしようとしたのだが、ストーカーは執拗かつ狡猾で、なかなかうまくいかなかった。
叔母はすっかり病んでしまったと言う。
そんな時祖母が、家の近くに隠れていたストーカーの目の前に現れて、いきなり歌いだしたのだそうだ。
「だるまさんがころんだ。だるまさんがころんだ。後ろ振り返ってよ。私はきっと捕まっちゃう。君は真っ赤なだるまさん。君は真っ赤なだるまさん。二度と帰らぬだるまさん」
祖母は「君は真っ赤なだるまさん」と部分を二度歌ったそうだ。
ストーカーの男は、隠れていたのに急に現れて歌を歌いだすと言う思いもかけない行動をする激しい怒りに燃える体格のいい中年の女に驚いたのか、その日はそのままいなくなったそうだ。
そして数日後、ニュースが流れてきた。
ある男がバイクで道端の鉄骨の資材置き場に突っ込んだのだ。
その男は両手と両足を切断したそうだ。
そしてその男は、叔母のストーカーだった。
そんな話だ。
祖母は、今は結構な年齢になったが、相変わらず元気で僕には優しく、いつも笑顔を絶やさない。
終