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リップクリーム

作者: 辺銀

 君に勧められたリップクリームを、未だに使っている。

 未練は絶対にない。

 君のことは、もう忘れたから……。


 そう言い聞かせ続ける。


 それでも、リップクリームを見る度に、君を思い出してしまう。

 本当、馬鹿みたい。

 一緒に居る時間が苦しくなって、別れたはずなのに……。

 これは、君からの最後の贈り物なんだね。


 お店に並ぶ、沢山のリップクリーム。

 気づけば、あのリップクリームを手に取っている。

 未練なんて絶対にない。

 何度も自分に言い聞かせてきた言葉。

 「そう思っている内は、君のことを忘れられそうにないね」

 誰もいない空間に、小さくこぼすことしか出来なかった……。


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