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【番外編】ミルキーウェイと天の川




リハビリ作です。七夕に間に合わせるように書いたので、後で修正するかもしれません。







「天の原 振りさけ見れば 春日なる 三笠の山に 出でし月かも……」


「ピア、歌?」


「歌……あ、うん。そうだね、歌だね。」


「天の原って?」


「天の川を見てたらなんとなく口をついて出たんだけど、天の原だったね。意味は空とか天上とかかな。」


「天の川は?」


「うーんと、ミルキーウェイだね。神話で言うと、ゼウスがヘラクレスに、義母ヘラのお乳を寝てる間に勝手にこっそり飲ませようとして、拒否られて母乳が飛び散ってできたと……。ほら、あの辺、星が集まって川みたいでしょ?」


「ピア、僕も飲みたい。」


「だめです! これはユピテルのです。それにさっきのはヘラクレスが赤ちゃんの時の話なの!」


「分かった。」


「それから天の川はね、前に話した牛飼いと天の神の子の話に出てくるの。牛飼いの男と天の神の娘は愛し合うんだけど、そのせいで仕事をサボっちゃって。天の神に天の川を隔てて西と東に引き離されちゃうの。だけど年に一度、7月7日にだけ会えるのよ。」


「牛と娘が引き離される……」


「牛飼いだけどね。この日に雨が降ると催涙雨っていって、二人は会えないらしいんだよね。」


「……ピア、僕サボらない。」


「うん、そうだね。……でもたまにはいいんだよ?」


「ピア、カスガとミカサは?」


「うーんとね。歌を作った人が元々住んでいたところの地名かな。……遠くに来ちゃって、帰れなくて。やっと帰れることになって、天を見たら、見えるのは故郷と同じ月だなってしみじみ思う歌なの。」


「ピアっ! 帰らないで!!」


「待って、ゴウ! 大丈夫よ、私は帰らないから。ここが家だもの。あと、ここの月は地球の月と全然違うから! デカすぎ。それにこの歌の人も、いざ出発となったら船が難破して帰れなかったのよ。」


「いい航海士を雇わないとダメ。」


「あ、うん。そうだね、安倍さんもアルゴー船に乗れれば日本に帰れたのかもね。……決めた! 来年から7月7日のキグナス島は、カササギフェアを行いましょう!」


「カササギって何?」


「カササギはカラスみたいな鳥でね、そういえば学名はピカピカじゃなかったっけ?」


「7月7日はピカピカフェア。」


「なんか楽しそうなフェアになりそうだね。オルペウスに歌ってもらう?」


「今日のオルペウス、悲しそうだった……」


「え!? まさか奥さんの命日とか? それとも自分と竪琴が川に流された日とか?」


「良い歌を思いつかなかったから。」


「なんだ……。じゃあ来年は私が7月7日の故郷の歌を提供しようかな。」


「オルペウス喜ぶ。」


「じゃあ笹を探さないと。笹ってこの辺にある?」


「ササって何?」


「笹はね……」






 

 闇夜に紛れ、窓から聞こえる二人の会話に耳を傾ける、ツートンカラーの二羽の鳥。カササギに扮して梨花を見守る太陽と月の夫婦神だ。


「望郷の歌が聞こえてきたから見に来たが。」


「大丈夫そうですね。」


「もう馬鹿なことはしないと約束したからな。」


「それに守るべき生命もありますしね。」


「……じゃあ僕たちも帰ろうか。」


「では天の川を渡って帰りましょう。」



 星を引き立てるような細く輝く三日月の下、白く明るく光る天の川を横切るように、二羽の黒いシルエットが、ゆったり寄り添って通過していった。






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