2.ペロペロ
初回投稿なので二回投稿しました。(良いよね?)
僕が名前を教えてから数分後に、僕を競り落としたポブツヌンが檻の前に現れた。
「今回はあまりいい買い物が出来なかったな。汚らしい獣と役に立つか分からない労働力……」
ポブツヌンは舐め回すように、僕とプリミエーレを眺める。
その視線に恐怖を感じたらしく、プリミエーレは小さく悲鳴を上げた。
「……おい。珍しい黒髪の獣人だから買ってやったが、ご主人様の顔を見て悲鳴を上げるとはどういうことだ?」
「ご、ごめんなさい」
「この汚らしい犬を檻から出せ」
ポブツヌンが横に控えていた屈強な男達に指示を出し、プリミエーレを檻から引き摺り出した。
プリミエーレはポブツヌンの前の床に転がされるとすぐに姿勢を正し、床に頭をこすりつける様に平伏して全身で謝罪を表現する。
「ごめんなさい! ご主人様が怖いだなんて思っていません! ごめんなさい!」
口ではそう言っているが、よほど怖いのか床と向き合ったまま全身を小さく震わせ、尻尾も下に垂れ下がっている。
「……それはそれでムカつくな。どれ、ちょっと躾てやるか。あれはあるか?」
ポブツヌンは屈強な男の一人に何か持ってくるように指示して、高そうな布製のカバンを持ってこさせた。
そしてそのカバンの中から、乗馬で使う鞭のようなものを取り出した。
「ひっ! ごめんなさい! ごめんなさい!」
顔を上げていたプリミエーレが鞭を見るなり、再び床に頭を擦り付ける程頭を垂れる。
「……獣が人の言葉を話すと思うのか?」
「ごめんなさい! 鞭は嫌です!」
「馬鹿な犬だな! お仕置きしてやる!」
ポブツヌンが鞭を大きく振り上げて、プリミエーレに向けて思いっきり振り下ろした。
乾いた小さい破裂音のような音が辺りに響く。
「痛い! ごめんなさい! ごめんなさい!」
「獣は人の言葉を話さないだろ!」
ポブツヌンは何度もプリミエーレの背中に鞭を叩きつける。
「ごめんなさい! ごめんなさい!」
「本当に物分かりの悪い犬だな! ワンと鳴け! この馬鹿犬が!」
「っ! わ、ワン! ワンワンっ!」
鞭が振り下ろされて打ち付けらるたびに、プリミエーレが涙交じりに犬の如く鳴く。
それが面白くなってきたのか、ポブツヌンの鞭の振り下ろす間隔がどんどん短くなる。
「ワンじゃ分からないぞぉ? もっと叩いてほしいのかぁ?」
「ぅっワンっ! いっっ! わ、ワン!」
「そうかそうか。もっとやって欲しいんだな? やっぱり獣人は身体が丈夫だから叩き甲斐があるな!」
下卑た笑みを浮かべて楽しそうに鞭を振るうポブツヌン。
それを反論せずに泣きながら、なされるがままに受け続けるプリミエーレ。
僕は既に我慢の限界だった。
『……ロキ。ごめんね君の身体が傷つくかもしれない』
『心配するな。俺も同じことをしようと思ってた』
『ごめん。ありがとう』
僕は大きく深呼吸をしてから、大きな声で叫んだ。
「おい! 抵抗しない女の子を痛めつけるだけの卑怯者! そんなに叩くのが好きなら自分の尻でも叩いてろよ! この豚野郎!」
僕の叫び声を聞いたポブツヌンの手が止まる。
それからゆっくりとこちらを見て、僕に指をさし屈強な男に何か命令する。
檻から屈強な男たちに引き摺り出されて、そのまま天井から鎖で両手を吊るされて、足が床から少し離れたくらいの高さで固定された。
「俺様が卑怯者だと? お前は自分がなんて言ったか理解してるのか?」
「もちろんだよ豚野郎。アンタの中では抵抗しない女の子に、暴力を振るい続けるのは卑怯じゃないんだな」
「物覚えの悪い獣に躾をして何が悪い」
「悪いのはアンタの頭と、その歪んだ心じゃないか?」
「……良い度胸だな」
ポブツヌンが鞭を振り上げ俺の、腹の辺りを打ち付けた。
鞭に打たれたところに、鋭い痛みが走る。
そのまま全身を叩かれ続けること三十分程度経った。
ポブツヌンは疲れたのか鞭で叩くのを止め、屈強な男たちに僕を降ろすように命じた。
『お、終わった? 身体の叩かれたところ全部が滅茶苦茶痛い……』
『ああ。俺もしっかり痛みを感じてるよ。俺が身体を動かしてなくても、色んな感覚は共有してるみたいだな』
「今回はこのくらいで許してやるよ。次はもっと酷くなるから覚悟しとけよ」
「……」
「ふん。答える気力もないか。……こいつらをもう一度檻に入れておけ」
屈強な男達に腕を掴まれて、床に転がる僕とプリミエーレえを無理やり立たせる。
そのまま僕とプリミエーレはもう一度檻の中に押し込まれて、扉を閉められて外から鍵を掛けられた。
さらにその檻に布を被せて外の景色を見えないようにさせる。その後、複数の足音が離れていく音が聞こえた。
『……行ったかな?』
『多分な。クソッ! ムカつく奴だった! マジで許さねぇ!』
『そうだね。でも取り敢えず助かったね』
暗がりにも拘らずプリミエーレは、僕の場所が正確に分かっているかのようにこちらに寄って来た。
「ご、ごめんなさい! だ、大丈夫ですか?」
僕は痛む身体を無理矢理動かして、プリミエーレの頭の辺りに手を伸ばす。
「ひっ! 本当にごめんなさい!」
手を近づけられて身体を縮こませている、プリミエーレの頭を優しく撫でた。
「……ごめんね」
「な、なんで謝るんですか?」
「もうちょと早く割って入れば、君に辛い仕打ちを受けさせることも無かったよね。……だからごめん」
「そ、そんな! 私の所為でそんなに傷を負ったのに、謝らないでください! 謝るのは私の方です!」
「……鞭で叩かれて痛かったよね。……獣のように扱われて嫌だったよね。……怖かったよね」
「痛々しいのはあなたです!」
まだ震えているプリミエーレの手を両手で包み込む。
「大丈夫だよ。僕だって怖かったけど、誰かと一緒なら頑張れそうでしょ?」
「ありがとうございます。……勇者様」
「僕はそんな大層な人じゃないよ。レベリオって呼んで欲しいな」
「……はい。レベリオ様」
「様って……まあいいや」
そうこうしているうちに、檻の中が大きく揺れ始めた。
多分このオークション会場に来たときと同じように、どこかに輸送されているのだろう。
「ゆう……レベリオ様。私の背中を舐めて頂けないでしょうか?」
「え!? な、なんで!?」
「傷は舐めて治すのが基本なのですが、自分だと届かないので……レベリオ様がお嫌なら舐めて頂かなくても結構ですが……」
『傷って舐めて治すのが普通なの?』
『知らん。獣人種の本能とかなんじゃないか?』
『女の子の柔肌を舐め回しちゃっていいの!?』
『敢えて表現をいやらしくしてないか? 舐めてやったら満足するだろ。やってやれよ』
この身体の持ち主に許可を頂いたので、プリミエーレの赤く痛々しい背中に舌を這わせる。
「んっっ! うぅぅっ! ぁあっ!」
艶めかしい声を上げるプリミエーレの背中を丹念に舐める。
鞭で打たれて切れてしまっていた背中の血を全て舐め取った位に、プリミエーレからもう十分だと言われて、僕は舐めるのを止めた。
「はぁっ、んぅっ! あ、ありがとうございました。とってもお上手でした」
「う、うん。こっちこそありがとう」
「レベリオ様の傷口の血も舐め取りますので、そこに横になってください」
『え!? それってお金を払ってやって貰うやつだよね!?』
『俺はもっとお姉さんな人が良いんだが』
『そういう問題なの!? ていうか良いの!?』
『良いんじゃね? やって貰えよ』
「じゃ、じゃあお願いしようかな?」
「はい。では、仰向けになってください」
「お、お願いします!」
プリミエーレは仰向けになった僕の上に身体を預けて、絡みつくように腕を這わせた。
身体が痩せ細っていて軽いが、女の子らしい確かな柔らかさを感じ、僕は戸惑う。
『ろ、ロキ! な、なんか凄いよ!』
『そ、そうだな。お、お姉さんじゃないのも悪くはないな』
「んっ、ふっんぅっ」
プリミエーレが荒い呼吸で一生懸命に、僕の身体に付いた血を舐め取る。
傷を労わる様に優しく舐められるのが凄くこそばゆい。
時間をかけて丁寧に、そして執拗に胸から腹の辺りまでを舐められて、先に僕の心が限界を迎えた。
「ご、ごめん! ありがとう! もう大丈夫だから!」
耐えられなかった僕は、プリミエーレの肩を掴んで身体から引き離した。
「あっ……。もういいんですか? 背中の方もまだですよ?」
「うん! な、治っちゃった! ははは……」
「そうですか……」
プリミエーレが残念そうな表情をしながら、自分の口の周りを舐める。
『す、凄かったね』
『あ、ああ。何がとは言えないけど凄かったな』
『後でお金請求されたりしないよね?』
『でも、払っても良い経験だったな』
『そうだね』
今までにない感覚を経験を共有した僕とロキは、そのとき心が通い合った気がした。
ただ一つ確かなことは……獣人種ってエッチだなってことだ。
書いていてR18にならないかな? と心配しながら書いていました。(大丈夫だよね? しょっぴかれないよね?)