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【A】―2

#初めて…


 うわ……視線が怖い。敵意とも取れる(あおい)くんの強い視線に、私はすっかり圧倒されてしまった。ええっと、なんて言えばいいんだろう、こういう時って。


「はじめまして、わたくし長倉と申します」


 ちがうちがう、それじゃ名刺するときのサラリーマン交換みたいじゃないか。


「どうも、良いお天気ですね」

「そうですね〜」


 て、それもちがうし……

 なんかわけわかんなくなってきた。どうしよう〜! 私が一人混乱していると、先に蒼くんのほうから会釈してきた。

 へ? あ!……。慌てて私も会釈する。やばい、向こうのほうが落ち着いてる。すると聡志(さとし)さんが優しく私に微笑みかけ、側に来た。

「乃々さんだ」とそれだけ言って紹介を終える。

「……」

 それだけ? 私はガクッとこけそうになった。それだけなんだ、私って。まだ結婚相手として紹介する段階じゃないってこと? まぁ、いきなり「この人と結婚する」と言って、思春期で傷付きやすい高校生の息子にショックを与えるよりいいのかもしれないけど。う〜ん、なんか悲しい。浮かない気持ちになる私だったが

「よし、食べにでも行くか」

 聡志さんの提案で、三人で出かけることになった。聡志さんが運転する車に乗って近くのファミレスに向かう。





 なんか不思議な感じ。

 入ったのはよくあるチェーン店のファミレスだったけど、そこに聡志さんとその息子の蒼くんと私の三人で座っている状況はすごく不思議な感じがした。私たちは四人掛けのテーブルに、私の向かいに聡志さん、その隣に蒼くんの席順で座った。私は二人と向き合うことになる。二人に見詰められてるみたいで落ち着かなかった。緊張のせいか食べ物の味がよく分からなくなる。やだな、この席順、と心の中でぼやく私だった。そんな私を気遣ってか、聡志さんは終始私に微笑みかけてくれていた。





 それから週末になると三人で外食することが多くなった。蒼くんは相変わらず無口だけど、とくに嫌がっている様子もなかった。嫌だったらきっと家にいなくなるだろうけど、約束した日はいつも家にいてくれた。私はフリーターだから毎日通うことはできないけど、少しずつ親しくなってきてる気がするし。こうやって少しずつ、一歩一歩距離を縮めていくのがいいのかもしれないな。でもね、でもね聡志さん。私はね……


「っ!?」

 は、私ってば何を……

 気が付くと私の右手は、聡志さんの膝の上にあった。ちらっと瞬時に聡志さんを横見。暗くて表情がよくわかんないけど、なんか気不味い。そんな私たちは今、映画館にいた。あれ……?

 退けようとした私の手になにか温かいものがそっと乗っかった。

「?……」

 聡志さん。彼の手だった。て さ、聡志さん!? 私の心拍数が急上昇する。うわああ……こんなことされたの初めてだよ。こんなにドキドキするものなんだ……。興奮して鼻息が聴こえてしまわないかと焦る私。く、苦しいぃ。口を閉じると苦しくなってきたので仕方なく口を開けて呼吸する。この時だけは魚になりたいと切に願う私だった(←鰓呼吸できるから)。

 その後終始心臓がバクバクしっぱなしだった私は、身体に悪い……とげっそり。映画(3D)は飛び出てきて凄かったし、聡志さんの手が気になっちゃうし、もう〜何にドキドキしてるのかわかんなくなってきちゃった! と叫びたかった。上映が終わって駐車場に向かう途中もその興奮は続いていた。

「面白かった?」と聞かれ、私は

「え、ええ。面白かったです」と言って手を口元に持っていき――は!? この手はさっき聡志さんが……と思い出してまた興奮してしまった。

「ならよかった」

 聡志さんのほうはさっきのこと気にしてないみたい。やわらかく微笑んで、普通に私の隣を歩いていた。まぁ、聡志さんがあんまりソワソワしてるのも変な気がするけど……


 車の前に来ると、聡志さんが開けてくれたドアから私は助手席に乗った。助手席のドアを閉めると聡志さんは、回り込んで運転席に乗り、ドアを閉めてシートベルトに手を伸ばす。私もシートベルトを閉めた。

「……」

「……」

 なかなか車を発進させようとしないので、不思議に思った私は聡志さんのほうを向いた。

「乃々ちゃん」

「え?」

 何? 聡志さんがこっちに顔を向けた。目が真剣。どうしたの? ドックン……ドックン……ドックン……。胸騒ぎが忍び寄る。ご、くん。生唾が渇いた喉を流れずに染み込んで消える。聡志さん? 彼の一挙一動に私の神経が集中する。どうしたの? と目で問い掛けることしかできない私。

 やがて聡志さんの唇が動いた。



「そろそろ、籍を入れようか?」



※選択肢はありません。そのままA-3へお進みください。

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