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【B】を選んだ方はこちらです。

◆◆あなたが選んだ行動は? どう展開するのか、続きを御覧ください◆◆


#再会 #歌詞


 これって“○○詐欺”とかじゃないよね?

 ん? その前に私の番号なんで知ってるんだ? そのことをメールで聞いた。それで答えられなかったら怪しいってことだもんね。気楽に待っていると


「あ?」

 すぐに返事が来た。


  “静香さんから聞いた” 


 静香さん――同じクラスに二個上(年齢が)でそういう名前の人がいた。本当~に時々だけどメールのやりとりもしている。


 じゃあ、もう一つ……


  “本当に雅樹くんか確かめたいから写メ送って”


 ――送信。


 ふふ、送ってくるかな?

 おもしろがって待つこと約15分。


 どれどれ……

「なにこれ、ちっちゃ!」

 送られてきたのは鏡の枠らしきものが映り込んだ硬い表情の雅樹くんだった。なんだか可愛くて、あの頃とあまり変わってない気がする。

「ふふっ」

 微笑ましくなって私は思わず吹き出してしまった。懐かしいな……

 その男の子とは同じ専門学校の友達だった。先に声をかけてきたのは彼のほうで、最初はちょ〜うぶな男の子だった。バンドのボーカルをやっていて歌がかなりうまいのに、クラスでは目立たない隠れイケメン。ジャニーズ系っぽくて絶対もてそうなのに、何故か恥ずかしがりやさんで女子と話すのが苦手と言っていた。そんな彼が何故だかある日、私に声をかけてきた。大人しいから話し掛けやすかったのかも。そうじも終わって生徒たちがみんないなくなった教室で偶然か、私たちは二人きりになっていて、帰り支度をしている私の席に彼が歩み寄ってきたのだ。ニコニコしながらフレンドリーな感じで。ドキドキ……ドキドキ……。何? 何? 何? 高鳴る鼓動。

 それまで男の子に免疫がなかった私は、かっこいい男の子に見詰められ、歩み寄られ、興奮して鼻血が出そうだった。


「音楽好き?」

 愛らしいキラキラスマイルで彼はそう話し掛けてきた。

「うん」

 ぎこちない感じで私は答えた。そんなキラキラしたアイドルみたいな瞳で見ないで〜! と心の中で叫びながらも実は喜んでいた。

「俺、バンドのボーカルやってるんだぁ。よかったら今度、ライブ見に来ない?」


 うわあぁ〜


 彼みたいな男の子にそんな風に声をかけてもらえるなんて夢みたいだった。それから帰りだけじゃなく、廊下でばったり会った時にも彼は声をかけてくるようになり、会話数も増えていった。どんな音楽を聴くかとかほとんど私は聞き役だったけど、語り合ったり。そうなるまでたいして時間はかからず、翌週には私は彼のバンドのライブを見に行っていた。ちっちゃくて狭いライブハウスとはいえ、カラフルな照明を浴びて歌っている彼の姿はもう惚れ惚れしちゃうぐらいかっこよくて、そんな彼に私は……うふっ。誘われちゃったのよ〜と密かに自慢したい気分だった。まだやってるのかなぁ、バンド。さすがにもうやってないか〜。でも気になったのでメールで聞いてみた。


  “やってる”


 返ってきたのは短い返事。なんだろう、この冷めた感じ……? 学生の頃は音楽の話になるとあんなに瞳をキラッキラさせてはしゃいでたのに。あ、でもこうして私にメールしてきたってことはプロのミュージシャンになる夢は叶わなかったんだろうな。テレビにも出てないし。そしたら触れてほしくなかったのかも。まずいこと聞いちゃったかな〜とあれこれ思考を巡らしているとバイブが鳴って、また雅樹くんからメールが来た。


  “今から会えない?”


「はっ?」

 何、この唐突な感じ! 呆気に取られ言葉を失っているとまたメールが


  “だめ?”


「う゛っ……」

 それを使うか?……

昔から彼はこっちが難しい顔をするとよくそうやって甘えた目で聞いてきた。あ〜思い出す。確かにかわいかった――昔は。だが今は30過ぎ。絶対かわいいはずがない! ブンブンと私は首を振って否定した。そこへ着信のお報せが――


  “今、電話していい?” 


 電話? ケータイを握り締めて私は苦悶した。メールは雅樹くんからのものだった。どうしよう〜。頭を抱える私。するとこっちの返事を待たず、着信音がけたたましく鳴り出した。


 あ!

 私はびっくりした反動でボタンを押してしまった。画面の表示が“通話中”になっている。私はゆっくりとケータイを耳もとに持っていった。


《もしもし》


 スピーカーから相手の声が聴こえてきた。


「もしもし……」


《びっくりした?》

「え?」

《急に電話したから》

「うん……」

《今、家?》

「うん」

《夜ごはん食べた?》

「まだだけど」

《そっかぁ、じゃあ、どっか食べに行かない?》

「……」

 ちょっと恥ずかしげな彼の口調に私は苦笑い。彼の『口下手なんだっ』てぜったい嘘だ。


《ダメ?》

 

 ほらね。甘えるのが上手。そう言われたら母性本能をくすぐられて、女はみんな許してしまうって知ってるんだ。

 そうやって私は騙された。







――来てしまった。

 夜遅くまでやっているサンドイッチ屋さん。そこで雅樹くんと会う約束をした。着いたらメールするって言ってたけど……まだ来てないみたい。私は店内をざっと見回してから飲み物を注文しにレジに並んだ。一階に空いている席はなかったので、ジュースを乗せたトレイを持って喫煙席になっている二階に上がる。具合悪くなりそう……。あちこちで白っぽい煙が漂う室内の隅っこの席で、げっそりしながらメールを打つ。


  “着いたよ。二階の窓際の席にいるから”


 数分後ケータイの着メロが鳴った。え〜っとこの番号は……多分、雅樹くん。あえて登録していなかったので、彼からかかってきても名前はでない。私は少しケータイとにらめっこしてから通話ボタンを押した。端末を耳に当て

「もしもし」

《今そっちに行くね》

 そう言ってすぐ電話は切れてしまった。その直後。


「ごめん、待った?」


 よく通る声がして振り向くと懐かしい顔がそこにあった。デニムにフリースジャケットというラフな恰好。雅樹くんだった。ニット帽を被っているのでわかりにくいけど、ちょっとだけ老けた気がする。そんなことを考えていると雅樹くんが頭に手を当てた。


「あ、これ、ハゲてるからじゃないよ!」と慌てて言う。

「そんなこと思わないって」と私は笑い、場が和んだ。それから雅樹くんは

「俺もなんか買ってくる」

 そう言い残して下の階に下りて行った。





 トレイに飲み物を乗せて戻ってきた雅樹くんは、それをテーブルに置いて席に着くなり歌いだした。

「?」

 突然そうやって歌を口ずさむ人はいるけど、話しかけてるみたいな歌詞だったので私はちょっと戸惑ってしまった。彼は私を見詰めながら歌い続ける。

 何?

 私の頭の中はハテナマークでいっぱいになっていった。どんどん頬が熱くなってくる。赤くなっちゃう……〜!


「――二人はまだ夢の途中」


 彼の歌が続く。

 やばい!

 堪らず私は美声の誘惑(?)を断ち切るように切り出した。

「その歌、誰の歌?」

「俺の。自分で作ったやつ」

「あ……そうなんだ。誰かが歌ってる歌なのかと思った」

 あはは、と笑った私の頬には、まだほてりが残っていた。

「……」

 彼はそのコメントには何も返さず、グラス入りの炭酸飲料をストローで啜った。ふとテーブルに置いていた私のケータイに視線を移す。

「俺の番号登録した?」

「え、してないけど……」

「ケータイ貸して」

「あ、自分でやるからいいっ!」

 慌てる私から素早くケータイを奪い取る雅樹くん。

「あ、か、さ、た……」

 私の声を完全無視して、雅樹くんは勝手に自分の名前を私のケータイの電話帳に登録する。

「いいって〜……もう」

 私が呆れたのを通り越して半ば諦めかけていると「誰これ?」と雅樹くんが何かを発見したみたいに言った。

「わわ、ちょっと、勝手に見ないでよ!」

 何を見られたのかわからないけど、焦った私はケータイを奪い返そうとするが、その手を雅樹くんが軽々と避けてしまって取れない。

「“聡志さん”て誰?」

「?」

 ドキッ。

「カレシ?」

 ドキドキッ。

「知り合いだよ」ととぼける私。それを聞いて雅樹くんは、興味を失ったみたいに「ふ〜ん」と言って、私にケータイを返した。







 雅樹くんとは乗る電車が違うので、駅で別れてから帰りの電車に乗った。もう8時を回っている。店を出た時、外は真っ暗になっていた。ガタンゴトン、ガタンゴトン。吊り革に掴まって揺られながら、そのまま瞼を閉じて眠ってしまいたくなる。明日からまた仕事かぁ。ふぁ〜あと小さく欠伸した。しばらく立ちっぱなしが続き、ようやく人が降りて席に座れてから、バッグを開けてケータイを取り出した。チカチカとランプが点滅し、メールのマークが表示されていた。さっそくケータイを開いて見てみると“雅樹”という名でメールが届いていた。なんだろう。読んでみると



  “夕べ夢で君に会った”



 え? 一行目から面食らってしまった。私は目を瞬かせ、次の行に進む。



  “月明かりが照らす薄暗い空の下で

   君は黒いドレスを身に纏い

   軟らかな唇に挿した赤いルージュ”



 へ? 黒いドレス? 赤いルージュって……

 次の行。



  “それが闇に踊っていた

   誘うように手を広げて回りながら

   近付いては離れ

   近付いては離れ

   白と黒の夢<せかい>の中で

   その唇の赤が妖しく浮かび

   引き寄せられた僕は君の手を取り

   からめとるように抱き寄せた

   白い月の無機質な視線を感じながら

   そのまま二人で静寂の中に堕ちていった


   白と黒の夢<せかい>の中で

   異質な君の赤い唇は冷たかった

   確かに重ねたはずなのに

   所詮それは非現実的世界<まぼろし>

   現実世界の君とは違う

   君は黒いドレスも赤いルージュも選ばない

   僕を誘惑することもない

   あの夜に確かに愛し合ったはずなのに

   所詮それは非現実的世界<ゆめ>



   あの夜のように君と踊りたい

   あの夜のように君をさらいたい

   現実世界で



   今、世界が闇に溶け

   月が上から見下ろしている

   まるであの夜みたいに

   まるで本当のことを知っているかのように



   夢の中の君が嘘つきなのか

   現実世界の君が嘘つきなのか”



「……」

 なんだろう、これ。よくわからないけど、雅樹くんがまた考えたのかな?

 なんて返信したらいいのかわからなくて、困ってしまう私だった。



 その日の真夜中に、彼からメールが来た。送信者名――雅樹。


  “また、ごはん食べに行こうね”


 23:58。

 それがその日、最後に来たメールだった。

※選択肢はありません。そのままB-2へお進みください。

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