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第十九話. きっと気のせい

 吉良くんと出かけてから、今日で丸1週間。ちょっとどうしてるかなとかが気になってきて、私はまたもや携帯の画面と睨めっこしている。センター問い合わせをしても、メールはきていなくて、こちらからメールしていいのかも分からなくて、昨日の夜からずっと、『元気ですか』これは違うな、『今何してる?』いやこれはなんか馴れ馴れしすぎるな。と、打ち込んでは消し、打ち込んでは消し。

 ふらっとコンビニにきてくれないかなとそんな都合のいいことばかり考えていた。


◆◆◆


 「お疲れ様です」

 今日もバイト。出勤したら、休憩室にいた女の子たちが、何やらキャッキャと楽しそうにしていた。気になって、盗み聞きはよくないが、準備をしているふりしてその場にとどまる。


「でね、この前連絡先を交換したんだけど、なんて送ればいいか全然わかんなくって!」


「あーー羨ましいなーーウチも恋したい〜〜。そんなんなんでもいいじゃんか〜〜送っちゃいなよお」


「えーーーむり!無理無理無理!!うざいって思われたらやだし」


 同じような悩みを持っているなあと思っていたが、レジに入ってから、私は急に、「え,これ恋だったのか?」と仰天した。


 恋。連絡したいとウジウジしているのはもしや、恋? いや、そんなことない。私は友達がいなかったせいで、ビクビクしているだけだ。友達付き合いの仕方が分からないだけだ。違う違う,恋じゃない,決して。自分のほっぺたをペチペチ叩く私に不思議そうな顔で大学生が見てきた。


 連絡する口実が欲しいと思っているのは、吉良くんのことが好きということなのだろうか。いや、そもそも好きって何?頭がこんがらがって哲学の世界に迷い込みそうになってきた。


 恋愛なんて、わたしにとっては小説の中のものでしかなかったのに。


「たーくん、きたよ!」


 グルグルの頭の中に、明るい女の人の声が入ってきた。現実に意識を戻すと、茶髪をフワフワに巻いた可愛い雰囲気の人が、大学生のレジの前に立っている。


「え! りーたん、こんな遅い時間に危ないよお」


 一方大学生は、いつもの口調とはかけ離れた言葉で、溶けそうな笑顔だった。


「だって、みかっちから、たーくんと一緒にバイトしてる人が女の子って聞いたんだもん」


 女の子……? 私のことか。なんだか分からないが、女の人から少しだけ敵意を向けられてるようだ。


「心配しなくても、俺にはりーたんだけだよ〜〜」


 「きてわかったけど、心配しなくて大丈夫そうだね、たーくんごめんね?疑って」


 そう言った”りーたん”の視線は私の足元から頭のてっぺんをくまなくスキャンしていた。私は慌てて目線を逸らす。目の端に一瞬、小花がモチーフのネイルを施した指先と、明るい色のスカートとそこから伸びる足が見えた。


 たった今、私は彼氏が惚れるような女じゃないと判断されてしまったようだ。いいような,悪いような。


「すんません、俺、彼女送っていくからちょっと外していいすか? すぐ戻るんで」


 大学生が一言声をかけて、彼女を連れてコンビニの外へ。


 やっぱり私に恋なんておこがましい。あのお姉さんのように華やかじゃないし、口下手だし、きっとあんな風に甘えることもできない。気のせい。気のせい。誰も来ない深夜のコンビニで、私はぼんやり時計を見ていた。

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