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第十五話. 食後の散歩

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 「美味しかったね」

 店から出た私たちは、駅前をフラフラしていた。

「うん、ごめんね、奢ってもらってしまって」

バイトしてるから、自分で出すといったのだが、結局吉良くんに奢ってもらってしまった。

「いや、全然いいよ! 気にしないで、俺から誘ったんだし」


 駅前には、田舎とはいえ、服屋さんや雑貨屋さんが立ち並び、その上土曜日だから若者がたくさんいた。人が多くても、今日は怖さを感じない。多分、吉良くんが一緒にいてくれるから。


「遠藤さんは、遠藤さんていうのもなんかよそよそしいね。いつもなんて呼ばれてるの?」


 いつも……か。いつもは名前を呼ばれることはほとんどない。中学時代も、遠藤とか、遠藤さんとかしか呼ばれてこなかったしな……。


「あんまり、あだ名とか、なくて」


 自分で言ってて悲しくなってきた。


「そっか。じゃあ、ゆうちゃんでいい? 俺のことも駿って呼んでよ」


 ゆうちゃん。今まで友達にも呼ばれたことのなかった名前で呼ばれて、わたしの名前は「勇」なんだと自覚する。吉良くんは、人と関わるのがすごく上手なんだなあ。

 でも、駿と呼ぶのは、少しハードルが高すぎる。


「じゃ、ゆうちゃん、は、小説のほかに趣味とかある?」


 趣味か。ゲームも最近やめてしまったし、本以外本当にないな。強いていうなら、毎日作っている料理はまあまあ好きかもしれない。


「料理、かな。その……駿、くん、は……?」


 名前をいうのも詰まってしまう。


「俺は、サッカーとか? 中学の時は部活に入ってて、今はやってないんだけど、時々家の庭でボール蹴ったりしてる」


「すごい、運動神経いいんだね」


 吉良くんらしいな、と思った。サッカーボールを巧みに扱う吉良くんの様子が目に浮かぶようだ。きっと、絵になるんだろうな、と思う。少し妄想に突入しそうになったわたしは、


「そうでもないよ。結局やめちゃったしね」


という、吉良くんのトーンの落ちた声で一気に現実に引き戻された。吉良くんの顔をみると、少し寂しそうな表情をしていた。


「ゆうちゃんは、中学の時の部活は?」


「わたしは、帰宅部だったから」


 中学時代、いまひとつわたしがみんなに馴染めなかったのは、部活に入らなかったことが一因かもしれない。小学校時代仲良くしていた友達は、みんな部活で新しい友達を作った。クラスで仲の良かった子も、放課後になってしまえば、部活に行き、休日は部活の仲間と出かけたりしていたみたいだが、わたしはそれには誘われなかった。特にやりたいことがあったかと言われるとそういうわけでもないが、部活動に憧れたりはした。でも、当時小学生の弟を長い間一人にさせるのは気が引けて、仕事で忙しいお父さんの手伝いもしたくて、一緒に入ろうという友達の誘いも断った。でも、それは自分が選んだことだ。


「だから、部活には少し憧れた時もあったかな」


 私たちは、公園のベンチに腰を下ろした。


「そういえば、これ、俺のおすすめ」


 そう言って彼が取り出したのは、古そうな本だった。すっかり忘れていた。わたしのおすすめ。


「あ、ごめん、わたし忘れてた」


「いいよ!また、次、って言ってもちょっとまた間あいちゃうかもしれないけど、持ってきて貰えば!」


「ありがとう」


 背表紙がボロボロで、タイトルがわからない。


「それね、俺が買った時も割とボロボロだったんだけど、俺が読みすぎて、さらにボロボロになっちゃったんだよね」



わたしは以前、学校でも苗字で呼ばれることがすごく多くて、家でもそこまで名前を呼ばれる機会がなかったので、自分の名前を忘れたようなもんでしたが、環境が変わって下の名前で呼ばれることが多くなり、その度に「うお、わたしは○○(本名)だったんか……」と日々衝撃を受けていました。特に異性に呼ばれたりすると、ちょっとビビりますね、普通に苗字で読んで欲しい。

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