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オルガのグルメin異世界  作者: TOYBOX_MARAUDER
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悪友の一面


 厚くもなく、薄くもなく、雨が降るような感じも雷が鳴るような感じもない、微妙な雲が空を覆う曇り空。冴えないぼんやりとした天気。その空を…青い長袖ジャージと同色のハーフパンツを身に纏った猫屋敷花子は眺めていた。よく手入れされた観葉植物が周囲に窺える学校内の中庭。そこに置かれたベンチに腰掛け、背もたれに両手を開いて置き、脚を組んで。昼休みの始まり際に。その手に身体測定の結果が書かれた用紙が1枚。それに目をくれることなく。


 そんな上の空な彼女の元へ、忍び寄る影。それは花子の背後から、ゆっくりと現れて彼女の手にある身体測定の用紙。それをパッと、奪った。


 「猫屋敷さんはどんな結果になったのかしら?」


 用紙を奪い、目をやるのは…花子と同じような服装の灰色の長髪、桜色の瞳の…前髪をポンパドールにした少女。近頃より絡んでくるようになった桜子だった。けれど花子は用紙を取り返そうとすることなく、重々しい溜息を1つ吐く。何か思い悩んだように。


 「…どうかなされたの? いつも以上にテンションが低いみたいですけれど。それほどまでにショッキングな結果でしたの?」


 いつものノリなら実力行使か…刺すような視線で見てくるところではあるが、今日に限って花子にそんな様子は微塵もない。その揶揄いがいのない花子に拍子抜けした桜子は、少しばかり心配そうな眼差しを花子へと向けた。


 「私の身長と体重…アンタから見てどう思う?」


 桜子は聞かれるがままに用紙の、体重と身長が記載された欄を見る。…身長は161センチ。体重は57キロとある。標準体重ど真ん中であるが、体脂肪率によってはぽっちゃりと言われてもおかしくはなさそうな数値。少なくとも雑誌などで書かれている理想と比べれば明らかに太っていると見なしてもいい数値だった。桜子は用紙を見た後に花子を一瞥するが、全体的に身体は細く見え、別に太っているような感じはしない。良く引き締まっている体型に見えた。


 「161センチ57キロ」


 「やめて、言わないで…! 聞きたくないわ…」


 不思議そうな顔をして花子の体格を眺める桜子の呟きに、花子は両手で耳を塞ぐ。強く目を閉じ、俯いて。まるでその事実を拒絶するかのように。その最中、桜子の視線は体脂肪率が記入してある欄へと向かう。


 「18.5…?」


 桜子の言葉が詰まる。…確かに運動はしている。部活を、軟式テニスを。桜子も花子と同様軟式女子テニス部だから良く知っている。しかし、低い。体脂肪率が。まだ身体が大人になりきっていない年齢ではあるが…まるでアスリートのような体質。桜子にはそう思えてしまった。


 「…食べないのが一番よね。入ってくるものが無いのであれば増えようがない…物理的に…」


 花子は依然として思いつめたように、何か決心したように呟く。ブツブツと。女性にしては低い体脂肪率。これ以上何をそぎ落とすというのだろうか。ネットの海に溢れる世迷い言に翻弄され、混乱状態にあるライバル。その頼りなく情けない姿を後ろから見ていた桜子は、花子の肩に両手を置いた。何処か憐れむ様な桜色の瞳で見ながら。


 「お気を確かに…早まらないでくださいな。それは悪手…食べなければ身体が省エネモードになって大きな効果は見込めず、苦しむだけ…。見た目はすらっとしているし、今のままではいけませんの?」


 「ダメよ。ネットで見たの。50キロを超える女に人権は無いと言わんばかりの多数派の意見を。55キロを超えれば否応なくデブ…そんな言葉が飛び交う場を…。160センチぐらいなら42キロが普通だとか…」


 それはもう鋭い棘のある性格ではあるが…何というか素直で…打たれ弱いのだろう。まさにガラスの剣と形容できそうな。花子は無責任な意見が跋扈するネットの海に毒されたのであろうことを桜子は察する。花子の口から出た、健康とはあまりにも程遠い身長と体重の例を耳に入れて。同時に、桜子は花子の両肩に置いていた手を離し、それで挟みこむ形で花子の頬を挟んだ。勢いよく、ペチンと音を立てて。


 「いたッ…!」


 「お待ちなさい。猫屋敷さん。目を覚ましなさいな。その水準は生理が止まる危険水域…鵜呑みにしてはいけない」


 頬を叩くような勢いで挟みこまれたことにより、痛みを感じてやさぐれたようなムッとした顔をした花子であったが、その直後に来る桜子の…目が覚めるような客観的な意見。それを耳にしたことによって、目を大きく見開いた。まさに目から鱗が落ちた。そんな風な表情で。顔を徐々に前へと上げて。その最中にも桜子は続ける。


 「試しに他のご学友にも身長体重教えて頂いたらいかが? 安心できると思いましてよ? 他には…身近にいる憧れの体系を持つ方の身長体重を聞いてみるとか」


 桜子は語り掛けながら花子の頬から両手を離してその背後から離れ、彼女の座るベンチの前へとゆっくりと回り込む。


 「それよッ! 今年で一番良い事言ったわ、アンタ!」


 桜子の意見を耳にした花子は、その碧い瞳をギラリと光らせ、声を大にして己の前へと来た桜子を指差す。辛気臭い顔をしていたのが嘘の様な、やや攻撃的な笑みを口元に浮かべた、溌剌とした表情で。


 名案らしい名案を言ったつもりはなかったが…ライバルが、花子がいつもの様な小生意気で張り合いのある感じに戻った。桜子はその姿に安心感を感じつつ鼻から息を吐き出し、腕を組んだところで…その隣にお玉とフライ返しを持った割烹着姿の小春が忽然と現れた。自然と桜子の視線は突如として現れたそれの方へと向く。


 桜子は己に会釈する小春に会釈で返し、彼女は行儀よく座り直した花子の隣に腰かけ、親しみやすいのほほんとした笑顔を花子へと向ける。――使い魔が来てからあまり時間は経っていないが、花子…彼女は使い魔と良好な関係を築いているようだった。その在り様はとても召喚者。主人としてのものからは程遠い物ではあったが。


 「どうしたんですか?」


 花子の隣に腰かけた小春は問う。自分が呼び出された訳、それを聞くべく。その様子は普段からの花子の相談を聞き慣れている風であった。


 「ズバリ聞きたいんですけど…ベウセットさんの身長と体重ってどんな感じなんですか? この間の夕飯の時、そんな話してましたよね?」


 「…なるほど。難しい年頃ですからね、花子ちゃんも」


 本人に聞く勇気がないがために自分と言う迂回路を使っての情報収集。そんな花子の腹の内、桜子の手にある健康診断の用紙を一瞥した小春は、この質問が一体どういう意図のもとでされたのか瞬間的に理解すると、少しばかり思い出すようにその深紅の瞳を上へとやり、思い出す様な素振りをした。


 「ベウセットさんは…177センチの77キロでしたね。確か」


 「あんなに細いのにですか?」


 「細くても胸が大きいですし…元は軍人さんですから筋肉量も圧して知るべし。とはいっても人間ではないので参考になるかは解りませんけど」


 重い。花子がベウセットの体重を聞いて思い浮かんだ言葉はそれだった。ついこの間モデルにスカウトされたとか言っていたベウセットの体重。その実態はモデルとはかけ離れたもの。しかし――確かに見てくれは良いのだ。胸は大きく女性的なフォルム。すらっとしたしなやかな身体つき。たとえそれが鍛え抜かれた筋肉が薄い脂肪でコーティングされたものだとしても。


 ベウセットの体重を聞き、少し考えた花子は真理を得る。重要なのは体重ではなく、体脂肪率。それが必要以上に高ければ…軽くともだらしない身体に見えたりするのだと。その答えに思い至った花子の顔にはもはや迷いなどは微塵もなかった。


 「ありがとうございます、小春さん。なんか自信持てました!」


 「お役に立てたみたいで良かったです。では何かあったらまた呼んでくださいね」


 この上ない肯定感と安心感。それらを胸に抱き、一切の曇りのない表情で胸の前で右手に握りこぶしを作る花子を見、小春はにこやかに笑うとその場から忽然と姿を消す。何の前触れもなく。


 その後で場に残るのは…いつも以上に自信満々な様子の花子と、ライバルがいつも通りに戻ってきたことを感じ取り、口元に静かに微笑を浮かべる桜子の姿。その中庭の一角に2つの影がやってくる。自分の連れを探しにやってきた2人組が。


 「蜜柑が言った通り一緒に居たぁ。ぽんちゃん花子好き過ぎるっしょ。ウケるんですけど~」


 「ったく、飽きないね」


 現れたのは花子の連れである雫と桜子の連れである蜜柑。花子や桜子同様青い長袖ジャージとハーフパンツ姿でやってきて、雫はケタケタと笑いながら花子の隣へ、蜜柑は呆れ混じりに言いながら桜子の隣へと歩み寄る。


 「花子ぉ、身体測定どうだったぁ? あたしちょっとヤバいかもぉ」


 雫は花子の膝の上に彼女の弁当を置いてから、彼女の隣へ腰かけて膝の上にて弁当包みを広げ始める。ただ言葉ではヤバいとは言うが、危機感が窺えるのは発せられる言葉でのみ。その緩んだ顔も声色も…危機感とは程遠い、呑気でマイペースないつもの雫のものだ。


 「ありがと。で、どうヤバかったのよ」


 「159センチで54キロ。ヤバくな~い?」


 雫の言葉を聞き、花子は徐に片手を己の腹部に。更に対の手を雫の腹部へと持っていくと…ジャージの上から肉を摘まんだ。その時指と指の間に感じる距離、摘まんだ肉の柔らかな感触は…花子の心に安心と、その表情に勝ち誇ったような笑みを齎す。その後で彼女は、手を膝の上にある弁当の方へとやった。


 「えぇ~、ちょっとなんだし~」


 「気にしないで。ちょっと自分を落ち着かせるための儀式…行為だったの」


 「ふーん…まっ、いっか。花子ぉ、お弁当食べよぉ」


 「えぇ、そうしましょう」


 すっかりいつもの調子を取り戻した花子は、雫が持ってきてくれた自分の弁当を広げつつ…視線を桜子の方へ。こちらが関心を示すことによってなんか調子に乗りそうだったので、聞くのは気が引けていたが、気になったので聞いてみることにした。彼女の身長と体重を。


 「桜子、アンタはどうだったのよ」


 「わたくし? 168センチ、56キロでしてよ?」


 身長が自分より高いせいもあるだろう。自分よりすらっと見える桜子の身体をまじまじと眺めながら、花子は彼女の身長と体重を耳にする。そういうのが気になる年頃故に、食い入るように。対する桜子は自分自身に対し、絶対的な自信があるようで…己の身長と体重、体系等に微塵の不安すら感じていない風だ。


 「BMI20ぐらいか…アンタでもシンデレラ体重まで行かないのね」


 言葉を言い終えた後で花子はハッとする。自分が今口走ったこと。それを可笑しく思った風に、口元に手を当てる桜子の顔を見て。それはまさに嘲笑。隙あらばマウントを取ろうとするマウンティングエルフの…ある種の本領が発揮される瞬間。紛れもなく触れられた地雷が爆発する瞬間であった。


 「ぷぷぷっ…もしかしてアレを真に受けているんですの? アレは大昔にエステ業界が勝手に言い出した事…。つまり妄言。根拠などない主張でしてよ? そんなものに振り回されるなんて可愛いですわね」


 普段は友人以外の他人に対してこれと言った興味を示さない桜子。大して構ったりすることもせず、ただただ己が思うままに進む女であるが…花子をおちょくる時の彼女は本当に楽しそうなもので、眉を八の字にし、頬を膨らませて笑いを堪え、流し目で見てくるその顔は…花子の顔を不機嫌な、むっつりとした顔にさせる。


 「…あー、ほんとムカつくわ。アンタって。何? 何なの? マウント取らないと死ぬの?」


 「自分のライバルに対し…優位を感じる。その事に対し、喜ぶのは当然なこと。そして勝者とは…その時、敗者を見下している…そういう物なのですわ」


 「なるほど。良く解ったわ。普段部活の乱打で私にボロ負けしてるから、滅多にない勝利とやらの喜びが骨身に染みるあまり、感情が発露してしまう訳ね」


 「うぐっ…! ぐッ…ぐぬぬ…!」


 一方的にマウントを取られていた花子の反撃。終わりの見えない不毛なマウントの取り合いの気配を感じさせるその一声は、桜子の顔を固まらせた後…歯を食いしばらせて悔しそうなものにした。もう少し取り繕えと言いたくなるほどに。


 ――図星のようね。


 人は時に口以上に仕草が物を語る時がある。その時の桜子の反応は…正にそれに当てはまる物であり、花子の腹の中に渦巻いていたムカムカを綺麗さっぱり消し去る。そして彼女は桜子と同じように、言葉よりもより良く己の言いたいことが伝わるであろう、余裕と悪意のある笑みを浮かべた。


 攻撃された回数。時間ではない。最後に勝った者が勝者である。そう考える花子は桜子から早々に視線を外し、彼女の向こう側に視線を移す。黙々と昼食を摂るネオ中野魔術学校の番長と呼ばれる少女…橙木蜜柑へと。


 「蜜柑は? 身体測定」


 「165の60」


 視界の端から悔し気な視線を送ってくる桜子の顔を映しつつ、花子が問えば、蜜柑は据わった目つきで花子の顔を一瞥。不愛想な表情で女にしては低い声で答えた。問われた内容を端的に。彼女の性格を知らなければ不機嫌そうにも見えるところであるが、桜子とはいろいろな面で絡んでおり、彼女の連れである蜜柑ともそこそこ交流がある花子にも、蜜柑の性格と言う物は理解できていた。故に不愛想にも思える反応は気にはならない。いつもの蜜柑だと思う程度で。


 「さすがは我らネオ中野魔術学校の番長。その辺のヒョロイ奴ぐらいならワンパンで沈められそうね」


 「そういうアンタも大して変わらないじゃないか。それより…さっさと食べたら? 時間あんまないよ? 桜子も」


 蜜柑は一切変わらぬ不愛想な表情のまま、己の膝の上に在る弁当箱に視線を落としつつ、話しかけてくる花子と…彼女に報復しようと考えを巡らせる桜子へ向けて忠告。箸で摘まんだミニトマトを口へと運び、奥歯で噛み潰した。


 その…蜜柑の忠告に花子と桜子は片手をポケットに突っ込んでスマートフォンを覗き込む。そしてそこに表示された時刻に…2人揃って一瞬フリーズすると…昼食を摂るべく行動を開始する。一方はマウントを取ろうとしてくる悪友の対応で。もう一方はライバル視する者へのマウンティングで。意識の外に行っていた時間を思い出したことによって。




 *




 部活と勉強。合間に挟まる友人や気に入らない奴との絡み。今日に限っては身体測定と言う、いつもと違う物がそれらの中に。ちょっとした風味付け程度のアクセントのある日常の1ページ。描かれるその日は暗くなる空と共に…見る者に終わり際を感じさせた。

 

 午後練を終えた各部活動の集まりは、自分達の部活を受け持つ顧問の元へ集合。部活を終えたことを報告し…三年生は解散。二年生は練習場や部室の後片付けを経て、学校の制服である深緑色のブレザーとワイシャツ、白と黒のチェックのスカートに着替えて各々家路へ。そんな1日の学校生活の終わりの後、帰途についた桜子は違和感を感じていた。


 街灯が在りはするものの、見通しが良いとは言えない限りなく夜の闇に近い暗闇。寄り道をするために行く、木々の疎らに見える人気のない路地。どこかから感じる視線…。それらに気が付いた時…桜子は足を止め――ため息を1つ吐いた。


 ――気まぐれで迎えを断りましたけれど…ろくな事にはなりませんでしたわね。


 彼女がその時、腹の中で呟くのは朝、徒歩で学校に向かうことを決めた己の決断を嘲った様な言葉。少し前まで狙われる身分だった故か、この状況でも一切取り乱さず、冷静に状況を分析し――彼女は心に思い描く。湧き上がる生命。己の持つ魔法を。


 陰り、黒く、まだ暗く。より漆黒に。桜子の足元から、薄く水の張ったパレットに落とされた黒い絵の具のように闇は広がり、アスファルトを円状に飲み込んでそこから…硬い甲殻と鋭く小さな顎を持つ、黒く、蠢く小さな昆虫の群れが湧き上がる。不快な羽音と共にそれらは飛び回り、周囲へと霧散する。黒い塊にすら見えた濃度だった無数のそれらが、嘘だったかのように。


 生命の魔法。それは灰咲桜子が適正を持つ魔法。生命と言えば清らかで神聖なイメージはあるが、使用者によって呼び出す物は違えども、大凡生命と言う文字から感じるイメージからかけ離れた悍ましいものだ。無に仮初めの意思と命、質量のある幻影の体を与え、意のままに操る…とされている魔法。学会では召喚魔法の一種ではと言う説等もあり、発生する"それら"がなんだかわかっていないのが実際のところであるが…桜子は使役する。今己の感じる違和感の正体を探るべく。


 だが、結果は妙な物だった。虫たちを経て感じる感覚で、この周囲に居る人間全ての位置は把握できたが…どれも己をつけている風ではない。


 ――先手を打たれた? となれば…影の魔法?


 そう考えた桜子は、散らせた虫を集め…それらに身を覆わせる。敵の攻撃に備えて出来上がるのは敵対者に集り、皮膚を噛み破って肉に潜り込む虫の鎧。周囲に霧の如く虫を飛び回らせる、桜子を核にゆらゆらと蠢く人型のそれは…おどろおどろしいとしか形容の出来ないものだった。


 「なになに? なんか悪い奴らに追われている的なシチュエーションで1人で盛り上がってる感じかしら? プークスクスクス!」


 そんな…警戒心マックスになった桜子の上方から、聞き覚えのある言葉が投げかけられる。自分の独り相撲を嘲ったような抑揚の。その声に…虫たちに覆われた桜子は驚いたような顔を1つし、その後で頬を真っ赤に染め上げた。空回った醜態を…よりによって声の主であり、今まで感じていた視線の主。口元に手を当て、頬を膨らませて笑う、己のライバルである花子に見られていたと認識して。


 「…猫屋敷さん。貴女は何も見なかった…良いですわね?」


 「昨日見聞きしたことを引き換えにするなら乗ってやってもいいわ」


 漆黒の虫たちが薄く透明になって行き…跡形もなく消えていく。その中で…桜子は花子の顔を見ようともせず言って、地上に降り立ったフリフオルの上で録画状態のスマートフォンのレンズを桜子に向け、スマートフォン越しに桜子を見る花子は条件を突きつけた。


 「――まさか、わたくしの弱みを握るためにつけて来たんですの?」


 桜子は静かに問う。少しばかりいじけたような顔をし、花子に徹頭徹尾目を逸らしたまま。


 「いや、アンタ野放しにしておくと取材班にいろいろ喋られると思って」


 花子を揶揄うために冗談のつもりで取材班に言った、また後程と言う言葉。そのことがもたらした結果。因果に…桜子は決まりが悪そうな顔をし、唇を尖らせる。依然恥ずかしさに花子の方を見ることが出来ないまま。対する花子は録画停止ボタンを親指でタッチ。スピーカーから発せられる効果音の後、花子はスマートフォンを持っていた腕を下げる。口角の上がった意地悪い顔をして。


 ――その音は終始視界に花子の姿を収めなかった桜子に…今置かれた己の状況を悟らせた。


 「…その条件…飲みましょう。お互い昨日今日の事を胸にしまう…それでよろしいでのしょう?」


 「そうそう、解ればいいのよ」


 平静を取り繕う桜子に対し、花子は上から目線の横柄な態度を示す。この腐れ縁。付き合いは長いため、桜子には解る。花子は動画をネタに…自分を笑いたいのだと。だからこそ話を長引かせないために早期決着に打って出た。多少の屈辱に耐えてでも。


 とはいってもこれは公平な取引。どちらもその手に持つ銃を下すからこそ保たれる均衡。多少の挑発程度であれば片方が耐えればいいだけの話。だが、それが行き過ぎて起きる本格的な対立は、双方に不利益を齎す。それが解っているがゆえに花子もそれ以上は踏み込まず、そこで話を終わりにした。


 大凡単独行動していい身分ではない桜子。彼女の単独行動から花子は色々と思考を巡らせ――パッと1つの説を得る。けれどそれは、桜子の目的を当てるための物と言うよりかは…茶化すことを主目的としたものだが。


 「それで、アンタこんなところで何やってんのよ。護衛も付けずに。もしかして彼氏とか?」


 黄色い翼竜、フリフオルの背中にある、神輿の如く繊細な装飾の施された、金ぴかの鞍の上に跨ったまま花子はニヤつく。その彼女の見え透いた考えに桜子は肩を竦め、呆れ混じりの微笑をその口元に浮かべると、再び歩き始めた。


 「まさか。このわたくしに相応しい殿方がそう簡単に見つかると思いまして?」


 「顔色一つ変えずに言うあたり最高にアンタらしいわ」


 桜子の返してきた言葉は、ナルシストの極みである彼女を知り得るものならば…誰しもが納得するであろう、これ以上の説得力はないであろうもの。思わずそれに花子はクスリと笑い声を立てた。何も言わずとも桜子の後を着いて歩き始めたフリフオルの上で。そして2人は進んで行く。少し道の広い住宅街へと。

 

 「気になることが幾つか。その翼竜…何か特別な力を持っていますの?」

 

 桜子は問い掛ける。今まで一度のミスすら起こしはしなかった完全無欠の虫による索敵。それを掻い潜り…五感にすら感知されずにフリフオルと共に現れた花子に。いつの間にか隣に来た、人も乗り物もやってこない車道を行く、フリフオルの横顔を眺めつつ。だが、その謎に…なんだか難しそうな反応を示すのは桜子だけではなかった。


 「水の魔法が使えるとは聞いてはいるんだけれど…良く解ってないのよね」


 人類初の群棲召喚を成し遂げた少女。猫屋敷花子。彼女から返ってくる言葉は…召喚者として何とも頼りない物だ。自分の使い魔の事すらほとんど何も解っていない風な。


 ――召喚者なら何となく使い魔の事は解る様になるはずですけれど…何か特別な使い魔なのでしょうか?


 桜子は考えた風にフリフオルの横顔を凝視。フリフオルはそれに顔を上下に振って応える。もちろんそこから解る物は一切なく、ただただ良く飼いならされたモンスターであると感服する程度だ。


 信じて疑わなかった己の魔法。それについて…悶々と桜子が進んでいるうちに、住宅街の一角にある、広めの庭を有する3階建ての公民館の様な大きな建物。その前には行き着いた。もう空はすっかり夜の顔に。あたりは電柱に取り付けられた街灯が頼りなく照らしている。少なくとも月明かり、星明りなどだけでは視界を確保するのは難しいほどには暗く。


 「アンタって定期的に親の会社が運営してる児童養護施設に顔出してるって噂聞いてたけど…本当にやってたのね」


 花子は、その建物の入り口の横に埋め込まれた金属板に記された"灰咲園"の文字を一瞥。それからフリフオルから降り…桜子の父親が運営する児童養護施設、灰咲園の佇まいを見上げた。


 「時期に王となる者がいずれ自分に付き従う者たちを労う。当然の事ではなくって? 貴女もやがては猫屋敷製作所の長となる身…参考に見ておくと良いですわ。この私の後姿を!」


 灰咲家に伝わる帝王学の片鱗が窺える、傲慢にも思えはするが、己の役目をきちんと理解している風な発言。それを声高々に、自己陶酔気味に、意気揚々と。自信満々な様子で胸を張り、言いながら己を見習えと言わんばかりの桜子はガラス扉を押して養護施設の中へ。その後に、桜子の発言の一部を一理あるとしつつも呆れた顔をする花子と…その姿を猫に変えたフリフオルが続く。


 ――映画で見た保育園みたいな内装ね。


 児童養護施設。心に傷を負い、荒んだ子供たちが暮らす場所。そんな偏見を持っていた花子であったが…以外にも玄関は綺麗…いや、綺麗過ぎると思えるほどのものだった。正面にはドア。左手には階段。目の届く範囲に埃は愚か散り1つない空間。きちっと寸分のズレもなく敷かれた絨毯。下駄箱に綺麗に納められた靴。拘る必要があるのかと突っ込みたくなるほど綺麗に揃え、立てられた傘立ての中の傘など。例を上げればキリがないほどに。その有様は…父、城一郎にかつて連れられて見た、猫屋敷製作所が持つ警備部門の社員達が住む社宅。そのエントランスホールで見た様な…只ならぬ整然さだった。


 「アンタが来てもいいように気合入れて掃除でもしたのかしら?」


 「超大型複合企業灰咲ジェネラルインダストリー。その中には当然民間軍事産業も含まれる。軍事関係の産業は…猫屋敷さん。貴女のところの専売特許と言うわけではなくってよ?」


 きょろきょろとあたりを見回す花子の隣を行く桜子は、花子の抱いた疑問を…皆まで説明することなく、花子には伝わるであろう匂わせる程度に返しつつ、靴を脱いで下駄箱に。


 「あぁ…なるほど。良く解ったわ。アンタのとこは人材確保のためにいろんな投資してるものね。大きな活動拠点があるベラルーシとかウクライナでも似たようなことやってそうね」


 桜子の言葉にこの養護施設が一体どういう教育方針なのか、なぜ軍隊の様な規律が保たれた風なのかを理解した花子も靴を脱いで、来客用の下駄箱に靴を揃えて置いた。


 「そうですわ。猫屋敷さん、せっかくですから一緒に夕食でもいかが?」


 「いいの? ってアンタここで食べるのね」


 「遠慮しないでくださいな。共に同じ食卓を囲むのも…王と家臣の絆を育む機会。その機会を見逃さないのは王として当然の事…生まれついての王なのですから! わたくしは!」


 「ほんとアンタって扱い辛いわ。本気で言ってそうだし。仮にそうだとして無能だったら道化として最高なんだけれど。と言うかウチはアンタのところの傘下じゃないわよ。業務提携はしてるけど」


 2人は会話をしながら少し広めの玄関を行き、奥にある扉の向こう側へ。先ず鼻に届くは優しい夕餉の香り。次にその室内の様子が視覚に飛び込んでくる。


 広めのダイニング。その中心にピカピカの長テーブルとそれを囲む椅子が置かれている。周囲には余計な物はなく、食器棚や絵本等が敷詰まった本棚、チョコレートブラウンの古時計。複数の観葉植物などが見え、空中ディスプレイを展開できるような機器は置かれていない、よく整えられた質素なもの。奥のカウンターテーブルを挟んだ向こうには、ダイニングキッチンにて夕飯の支度をしている、迷彩服姿のスタッフらしき3人の女性の姿が見えた。


 花子はとりあえず部屋の隅に荷物を置き、家に伝言を頼む為、ウィンゲルフを呼ぶことにした。彼の位置は…自分の使い魔1人1人に一時的に与えられた社宅の自室。暇そうであるゆえに呼び出して問題なさそうと考え――今、彼の名を心の奥底で呼ぶ。


 一瞬花子の前。その床に黒くタールの様な水たまりが出来たと思えた瞬間、それが人型を形作り…薄い灰色の髪、頭に生えた2本の角。縦長の瞳孔。褐色の肌。ファンタジックな身体的な特徴を持つ身体が…白地のTシャツとデニムパンツと言うシンプルなファッションに包まれた、ウィンゲルフとして顕現した。


 「――敵襲かッ!?」


 彼は花子の身に何か危険が迫ったと思ったようで、声を上げて身構えていたが…ダイニングキッチンの向こう側にいる、なんだか不思議な物でも見るような顔をする女性スタッフと目が合ったことにより、すぐに状況を理解。暖かな雰囲気のダイニングの中で…振り返って花子を見た。自分を呼び出した理由。その説明を求めるかのように。


 「今日桜子のところで夕飯食べるから爺に伝えて置いて」


 「まてい。それだけのためにこの俺を呼んだのか。凄いんだぞ。魔王は。お前はぞんざいに扱うが。もっと敬えい」


 桜子がダイニングキッチンの向こう側にいる灰咲園のスタッフたちに軽い挨拶をし、彼女たちの方へと向かっていく最中…まさにパシリと言える要件で魔王ウィンゲルフを呼び出した花子。彼女は言い繕う事もなく、ありのまま自分の要求をウィンゲルフに伝え…それを耳にした彼は、抗議の声を上げた。小言と共に。心が広いのか不機嫌そうではあるが、怒った様子はなく。


 「アンタ実力は凄いって話聞くけど…体格的に見て喧嘩売ったら明らかにヤバそうなオルガはしょうがないとして、ベウセットさんに絡んで一方的にボコられてたのを見て以来…どうもね。イメージが。もうほんと。伝書鳩にしてもいいかなって」


 返ってくる花子の言葉は無情な物。その時、彼女の脳裏に過る映像は――空のプリンカップを見て絶叫し、その近くに居たベウセットを己のプリンを食べた犯人と決めつけ挑み…一方的にボコられる過程を経た結果、床を舐める羽目となったウィンゲルフの無残な姿。それは…ウィンゲルフの威厳。尊厳を花子の心の中、認識において…地に落とすには十分すぎるほどだったのだ。


 その花子の発言は…ウィンゲルフの顔を一瞬だけ悲しそうな…やるせなさそうな顔をさせたが、彼は気丈にもすぐにいつも通りの自信満々な表情をその顔に張りつける。空元気。虚勢かもしれないが、胸を張って。


 「ベウセット…奴はきっとどこか凄い世界から来た…そう。神的な。そんな奴だったからどうもできなかったのだ。時間停止…因果とか概念介入とかそんな感じのも全然効かないし」


 「脳みそがファンタジーの世界に飛んで行ってる頭悪い男子中学生みたいな事言ってんじゃないわよ。因果だとか概念だとか。私の中の共感性羞恥が一気にギブアップ宣言してきたじゃないの」


 花子に言い聞かせると言うよりかは己自身に。負けてしまった事実を仕方なかったと肯定するかのように、ウィンゲルフは言う。瞳を閉じ…引き攣る半笑いで。けれど花子の毒牙は鋭いまま。情け容赦なくウィンゲルフの心を襲い…彼の顔を若干不貞腐れたようなものに変えた。


 「むぅ…本当に出来るんだぞぉ。俺はァ…。魔王なんだから…。まあいい、それで…なぜ俺なんだ」


 「いや、部屋の中で暇そうにしてたし…呼んでも問題ないかなって思って」


 「うーむ…それについては否定はせんが…アレだな。癪に障るな。魔王なのに伝書鳩扱い。魔王なのに。イグナートとかベウセットじゃダメだったのか」


 「皆まで言わなきゃわからない訳? あの2人は一番怖いのよ。どう接していいかわからないし。呼ぶわけないでしょ」


 ウィンゲルフは悔し気に唇を尖らせ、小さな声で言葉を紡ぐ。不満そうな抑揚でいじけた様子で。己の胸の前に両手を出し、人差し指と人差し指を合わせて横目に花子を捉えながら。対する花子は何の臆面もない様子で、ありのままの自分の気持ちを剥き出しに、ウィンゲルフの問いに答える。しかしそれは…ウィンゲルフにとって花子の弱みに見えるものであり、彼に反撃の機会を与えることとなった。


 「やーいやーい、ヘ・タ・レ! 臆病者~! 少なくとも俺は昨日俺のプリンを勝手に食べたベウセットに立ち向かう勇気はあったぞ。見習うべきだとは思わんのか。この俺の主として」


 ウィンゲルフ。彼は反抗を開始した。この話の目的、趣旨を脱線させながら。己をぞんざいに扱う主人を人差し指で指し、その成りにしては幼稚な物言いで、ここぞとばかりに。だが…口論。罵り合い。今まで歩んできた人生か、それとも生まれ持った性質か…それらに関しては花子に分があるようで、彼女の顔はムッとする程度。少なくともウィンゲルフの言葉を攻撃として受け取った風なく、両手を己の腰に当て、フンと鼻を鳴らして胸を張り…語り始めた。


 「こっちは14歳になったばっかりの可愛い可愛いいたいけな女の子。魔王とは違うの」


 都合よく相手と己の違いをピックアップ。強調し、己の都合の良いように語る花子。その恥ずかしげもない自身への評価に…ウィンゲルフは面を食らい、その後で顔を背けた。自然に零れた失笑と共に。だが、花子の止まらない。淀みなく続く。


 「それに事の発端となったプリン。あれを食べたのオルガ。空のカップがベウセットさんの傍に置いてあった…その安易な状況証拠だけでアンタが突っ走った結果がアレ。汚点としか言いようのない惨劇を、武勇伝のように語るのはいかがな物かしら?」


 緩やかな身振り手振りしつつの花子が語り終え…相手を言い負かすこと、従えることに目的が変わった泥沼の論争の気配が立ち込め出した時…桜子がダイニングキッチンから睨み合う2人の方へと戻ってきた。今さっきまで誰かと通話していたようで、耳元に当てていたスマートフォンを下ろしながら。


 「巴川さんにはわたくしが伝えておきましたわ。さぁ、こちらへ。ウィンゲルフさんも」

 

 花子とウィンゲルフ。2人のやり取りを遠目に見、双方とも意固地になって猫屋敷家にいつまで経っても連絡を入れないと桜子は見越し、先手を打ったようだった。その彼女からの報告は…あまりにも幼稚な意地とプライドの張り合いを繰り広げ、互いに引くに引けなかった花子とウィンゲルフの争う理由を消し去って、互いの煮え切らない様子で顔を背けさせた。


 「一時停戦だな」


 「召喚した時から気に入らない奴だと思ってたのよね。本当にムカつくわ」


 ウィンゲルフと花子は互いに吐き捨てるように言って、桜子の後へと続き…桜子が腰かけた席の対面に花子が。その隣にウィンゲルフが座った。ある意味仲が良さそうな2人の姿を、桜子は頬杖をついて眺めて瞳を細める。


 壁際に置かれたシックなデザインの古時計の短針はそろそろ7を指そうとし、長針は11の位置に。19時に食事がスタートするのだろう。ダイニングと玄関を繋ぐドアが開かれ、ここで暮らす子供たちが集まってくる。年齢層は大凡中学生から小学生まで。だが――彼ら彼女らの凛々しい面構えは、教育…捻くれた見方をすれば、ある種の洗脳とも言い変えられるだろうか。年齢に対して、しっかりとした大人びた物が感じられた。


 家庭に問題があったり、はたまた親の顔も知らないような…人を信じられるような道のりではなかったであろう人生を歩んできた子供たち。荒み腐っても変ではなさそうであるが、花子とウィンゲルフに頭を下げて会釈した後、ダイニングキッチンの方へ。規律正しく、役割分担をし、出来上がった食事をテーブルへと運び出す。その軍隊の様な有様に花子は目を丸くし…ウィンゲルフは何か理解したように口角を上げた。


 「なるほど。見習い騎士の養成所か。ここは」


 ウィンゲルフは自信満々にこの養護施設がなんであるかを語る。違うと言えば違うのであろうが…当たらずとも遠からず。そんな風に花子は感じつつ、ウィンゲルフから得意げに胸を張った桜子へと視線を向ける。


 「ご名答。ゆくゆくは灰咲ジェネラルインダストリーを…いえ、この国日本の未来を担う、我が兵が育つ家ですわ」


 ――誤解を生みそうな表現ね。


 声高々に。冗談でもなさそうに語る桜子に花子は内心ツッコみを入れながら、言い当てたことを確信してこの上なく満足そうな顔をするウィンゲルフを横目で一瞥。それから手際よく整えられていく食卓の上と視線を移した。


 「お嬢、お飲み物は?」


 「お構いなく。ある物で構いませんわ」


 食事の用意が成される中、ここで暮らす少年から声を掛けられる桜子。その淀みなく、自信に満ちた受け答え…風格は同い年ながら未来のリーダーとしての片鱗を感じるもの。花子に自分自身の立場を考えさせるものであった。


 ――確かに人を引き付ける魅力はあるのよね。間抜けに見えるときもあるけれど。


 自分と桜子。それを比べて花子が物思いに耽ろうとした時、食卓は整い、長テーブルの席にこの施設で暮らす子供たちとスタッフが腰を下ろす。けれどすぐには食べようとはしない。ナイフとフォークを手に取って食事を開始しようとし、花子に頭を叩かれるウィンゲルフ以外は。


 「いただきます」


 恥をかかせるなと言わんばかりの辛辣な表情の花子と、バツの悪そうな顔をし、口元を渋めながら頭を摩るウィンゲルフ。2人のやり取りに一部の子供たちは笑いをこらえたように口角をぴくぴくと動かしていたが、桜子が顔の前で両手を合わせた所で皆同じようにし、各々食前の祈りを口ずさむと食事が開始された。


 家族、家。とどのつまり居場所。それがあればたとえ父や母が居なくとも…健やかに育てるものなのだろう。そう思わせてくれるような和気あいあいとした夕飯時。使い魔が来るまで1人で食事を摂ることがほとんどだった自分より、そういった意味では恵まれているのかもしれない。同じ食卓を囲みつつ、花子はぼんやりと考えて――頬に米粒をつけ、口いっぱいに物を頬張るウィンゲルフを横目で一瞥。ジト目で彼を見つめると己の頬に指差して見せた。


 そんな…桜子の暮らす世界。居場所。その中で花子も食事を開始する。己の使い魔たちと囲む嘱託とはまた違った趣のある暖かさの中で。嘗て自分が欲しがったものの中で。

殴り合いとか格闘とか…戦い。それをするには体重…筋肉が必要なんだよ!

とりあえず次回辺りは体力測定…守ってあげたくなるような非力な女の子が好き。強い女の子は嫌い。そういう主義の人には面白くないかもしれません。

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