チートジジイ
「あれが剣聖……」
「ただの爺じゃねーか?」
「甘いわよチース。あのおじいちゃん、以前あたしのダンジョンに来たけどSランクモンスターなんて敵じゃなかったわ」
「マジですか!」
司令室でマスターたちと見ているモニターに写ってるのは、一人の老人。
和服のような着物に五本の刀を腰にさしてのんびりと歩いている。
小手調べにアダマンタイトゴーレムスライムを一体送り込んでみたら一刀両断、瞬殺だった。
アダマンタイトって切れるんだ……なんだあのチートジジイ。この世界年寄りの方がただ者じゃないやつが多いな。
何故か鑑定しても、ぐさぐさに斬り刻まれた画面が出てくる。
鑑定を斬ったのか?そんな無茶な……。
「どうにかしてあの爺さんの目的が知りたいな」
「ユースケ様、儂に任せてもらっても構わんかの?」
「老師、大丈夫か?」
「奴とは顔見知りでしてな。まあいきなり殺されはしないと思いますじゃ」
なんか自信あるみたいだしお願いするか。
老師は散歩にでも行くようにゆっくりと司令室を出ていった。
老師が第二迷路に向かってる間にジジイは第一迷路を楽々と突破。タンクスライムも弾を切られてあえなく撃破。
もうこのジジイを止めることはできない!
ジジイが第二迷路の中間まで来たところで老師と鉢合わせした。
「ゴの爺じゃねえか。なんでここに居やがる?」
「ほっほ。相変わらず汚い口じゃのう小僧」
そう罵り合って二人は戦闘を始めた。
おいおい、なんで戦いになるんだよ!
「…………真剣白羽取りって指二本でできるものですかね?」
「斬撃飛ばすとか、もはや魔法でしょあんなの……」
「……爺怖い」
確かに剣聖のジジイはすごい。だけどさあ、なんでこっちのジジイもそれに渡り合えるくらい強いんだよ⁉
もうどうやって戦ってるのか俺には見切れない。
戦いを目で追えてるのは、自力でマスターに選ばれた俺以外全員だ。
下位のダンジョンマスターたちは目で追うのがやっとみたいだがな。
「ち、ちょっと行ってくる」
「お気を付けて。どうか死なないよう」
縁起でもないこと言うなよ。




