スピード出世
翌日疲労の溜まった体に鞭打って、俺はジェノルムの部屋経由でギルドの受付に行った。
「おはようございます。ユースケさん。その、大丈夫ですか?」
慣れない徹夜のせいで目の下にはっきりとくまが浮かんでいるのを見て、お姉さんは引き気味だが心配してくれた。
「大丈夫です。常設依頼のモンスター捕獲してきました」
「早速ですか!早いですね。……ところでそのスライムはどこに?」
アイテムボックスからアダマンタイトスライムやドクタースライム、その他スライムたちを出すと、カウンターから溢れてしまった。
「こ、こんなに⁉そもそもここからスライムダンジョンまで何日もかかるのに……いやいやいや!このスライムたちどこから出したんですか⁉」
ツッコミが渋滞してる。
「近くにスライムダンジョンのテレポートゲートがあるダンジョンが有ったので往復には時間がかかりません。今のはアイテムボックスの魔法です。奥の方を探索してたら宝箱の中にスクロールがありました。スライムの数が多い理由は企業秘密です」
「ギルマスー!」
お姉さんは叫びながらカウンターの向こう側からジェノルムを引っ張り出してきた。
部屋にいないと思ったらこっちで仕事してたのか。
「なんだ?うおっ、ユースケよう。やりすぎるなよって言ったよな?」
「やりすぎか」
「十分やりすぎだ。アダマンタイトスライムもいるな。これで大物の討伐依頼でもこなせばSSランクは固いな。とりあえずAランクに昇格だ。多分JからAに一日でなるなんて世界新記録じゃないか?」
冒険者カードを出せと言われたので渡すと、白金製のカードになって帰ってきた。
これがAランクのカードでAランク冒険者の別名はプラチナランクだ。
なんかクレジットカードみたいだな。
なんにせよ、これである程度のダンジョンなら挑むことができる。早くチビ共を進化させてやらないとな。
「アイテムボックスのスクロールがダンジョンにあるのか?」
「うん、あったけど。依頼には無かったから手持ちは三枚だぞ」
「金に糸目はつけん!売ってくれ!」
くわっと目を見開いてカウンターから乗り出してきて頼まれた。
そういえば、タッタリーのじい様が失われた魔法だとか何とか言ってたな。完全に忘れてた。
「ちなみに依頼があったとしてランクで言ったらどのくらいになるんだ?」
「無いから分からん。まあ伝説の魔法と呼ばれてるし便利すぎるからLランクと言っても過言ではないかもしれない」
「へえ…………あ、もうそろそろスクロールの入った宝箱を置いたところに冒険者がたどり着きそうなんだけど」
小声で言うと、ジェノルムは。
「仕事増やすのやめてくれないか?」
とぼやいた。
大概の人は俺のダンジョンによって利益しか得てないが、ジェノルムはそうでは無いようだ。
利益以上に仕事が増えるらしい。
働き者のギルマスに敬礼!




