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邪神の中

 防御魔法のお陰で風圧は感じないが、そのせいでぐんぐんと迫る邪神に集中できてしまった。 

 大きな脅威である光との戦いで消耗していた邪神は、目の前に飛んできた俺を凝視する。


 目玉の中ったってどうやって入れば…………このまま防御魔法頼りで突っ切るか。

 もう邪神と衝突しそうな中で俺は必死に頭を回転させる。


「雄亮さん!」


 光が俺を呼んだ。

 振り返ると、彼は妖精の剣を俺に投げつけた。

 勇者覚醒によって増大した膂力によって投げつけられた妖精の剣は、容易く先輩の防御魔法を破壊する。


「ありがとぅぉーーー!?」


 咄嗟に妖精の剣を掴んだが、剣の勢いに引っ張られて更に速く邪神へ突っ込む。


『主殿、このまま切り裂きますぞ!』


「ああ!もうどうにでもなれ!」


 妖精の剣が光り輝く。俺は剣に引っ張られるような形で邪神の目玉の中に侵入した。


「くそ、どこだ?」


 邪神の目玉の中は真っ暗でどこまで続いているのか把握できない。

 空間がネジ曲がってるのか、明らかに目玉の容積じゃない。


『ご主人、あまり長くは居られないっすよ!』


『は、早くお願いします』


 鎧と盾がきえいりそうな声で俺を急かした。

 こいつらの守りがなくなったら俺はどうなるんだ?

 この暗闇に飲み込まれるのか?


『主殿、あれを!』


 剣が魔法を放った先には仄かに紫色に光る玉と鈍い灰色の玉があった。


「あれか」


 野球ボールくらいの玉を懐に入れて、入ってきた時に切り開いた光る出口へ俺は飛び込んだ。


「雄亮さん!」


 邪神と戦いながらも注意深く俺が出てくるのを待ち構えていた光が、俺の腕を掴み先輩たちの下へ転移する。


「よし!撤退だ!」


 先輩が離れていた仲間たちを転移で集めてドームの壁をぶち破った。


「走れー!」


 後ろを振り返ると、光に切り落とされたはずの触手が轟音を立てて追いかけてきた。


「光!あれ何とかならないのか!?」


「だめですよ。もう時間切れです。あぁ、反動がぁ……力が抜け」


 そう言い残して光がバタリと倒れてしまった。

 勇者覚醒の伸び幅が大きい分反動も他の勇者の比じゃないのか。


 光の後ろを走っていたソランとアキトが息ぴったりに光の右手と左手を掴んで引きずりながら走る。


「痛い痛い痛い!削れますって」


 勇者覚醒の際に鎧が壊れてインナー姿の光は硬い石畳の上でガリガリと音を鳴らしながら悲鳴を上げた。


「喋れるなら元気じゃないの」


 隣を走っていたヴァイオレットがぽつりとそう呟く。

 触手から逃げること数分、船が見ててきた。


「飛び乗れー!」


 先輩に続いて俺たちは船に飛び乗った。

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